ガイドラインの性格
AI 事業者ガイドラインは、総務省と経済産業省が2024年4月に策定・公表し、2025年3月に第1.1版へ改訂した指針です。それまで別々にあった「AI 開発ガイドライン」「AI 利活用ガイドライン」「AI 原則実践のためのガバナンス・ガイドライン」を統合したものです。法的拘束力はなく、事業者が自主的に参照して適切な AI ガバナンスを構築することを期待するソフトローで、技術や国際的な議論の変化に応じて継続的に更新されるリビングドキュメントと位置づけられています。従わなくても直ちに罰金が科されることはありませんが、個人情報保護法や著作権法など個別の法律に違反すればそれらの責任は生じます。
構成は、基本理念、原則、共通の指針、高度な AI システムに関係する事業者に共通の指針、AI ガバナンスの構築、の順に整理されています。
3つの主体
| 主体 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| AI 開発者(AI Developer) | AI システムを研究・開発する事業者 | 大規模言語モデルを開発した X 社 |
| AI 提供者(AI Provider) | AI システムを製品やサービスに組み込んで提供する事業者 | そのモデルの API で顧客対応チャットボットを構築し企業向けに販売する Y 社 |
| AI 利用者(AI Business User) | 事業活動で AI システムやサービスを利用する事業者 | そのチャットボットを自社のサポート業務に導入した Z 社 |
1つの企業が複数の役割を兼ねることもあります。事業活動以外で AI を使う業務外利用者や、データ提供者はこの3主体には含まれません。
AIガバナンスの構築
ガイドラインは、不確実性の高い AI について事前に完璧なルールを定めることは難しいという前提に立ち、次のサイクルを回し続けるアジャイル・ガバナンスの考え方を示しています。
- 環境・リスク分析
- AI ガバナンス・ゴールの設定
- AI マネジメントシステムのデザイン
- 運用
- 評価
- 環境・リスクの再分析(1に戻る)
ルールを一度決めて固定する、企業は何もしない、全面禁止する、といった考え方はこれに反します。
AI利用者に求められる取り組み
- 提供者が示す利用範囲や注意事項に従って適正に利用する。
- 個人情報や機密情報を含む入力データを適切に管理する。
- 生成物の内容を確認する。
- AI 利用に伴うリスクについて関係者に説明できるようにする。
モデルの内部構造を設計し直すのは開発者の領域で、出力を検証しないことや責任を提供者にすべて転嫁することはガイドラインの趣旨に反します。
試験で問われる観点
- ガイドラインは法的拘束力のない指針(ソフトロー)。策定は総務省・経産省。
- 3つの主体の定義と、ケースでの当てはめ。
- AI ガバナンス構築のサイクル(アジャイル・ガバナンス)。
- 従来の複数ガイドラインの統合、3主体それぞれへの事項の提示。