3つの基本理念
2019年に日本政府が策定した「人間中心のAI社会原則」は、AI がもたらすべき社会の姿として3つの基本理念を掲げています。AI 事業者ガイドラインもこれを引き継いでいます。
| 理念 | 内容 |
|---|---|
| 人間の尊厳が尊重される社会(Dignity) | AI に過度に依存したり、AI によって人間が操作されたりせず、人間の尊厳が守られる |
| 多様な背景を持つ人々が多様な幸せを追求できる社会(Diversity & Inclusion) | 多様な人々がそれぞれの幸せを追求できる |
| 持続可能な社会(Sustainability) | AI を格差や環境問題の解決に活かし、持続可能な社会をつくる |
経済成長、効率性、完全自動化といったものは基本理念には含まれていません。
人間中心の考え方
AI は人間の能力を拡張し人々の幸福に資する道具であり、AI の利用が人間の尊厳や自律を損なったり、人間を操作したりしてはならないという考え方です。AI を使わないという主張でも、人間が責任を放棄する考え方でもありません。
共通の指針10項目
AI 事業者ガイドラインは、AI の事業活動を担うすべての主体が取り組むべき事項を10の「共通の指針」として整理しています。
| 指針 | 内容 |
|---|---|
| 人間中心 | 人権・尊厳・多様性の尊重 |
| 安全性 | 人の生命・身体・財産、精神、環境に危害を及ぼさないようリスクを評価し対策する |
| 公平性 | 学習データの偏りなどによる不当な差別やバイアスが生じないよう配慮する |
| プライバシー保護 | 個人情報の適切な管理 |
| セキュリティ確保 | 脅威への対策と脆弱性管理 |
| 透明性 | AI の利用や判断の過程・根拠について適切な情報を提供し、検証可能にする |
| アカウンタビリティ | AI がもたらす結果について責任の所在を明確にし、説明責任を果たす |
| 教育・リテラシー | 関係者への継続的な教育 |
| 公正競争確保 | 市場支配や過度なデータ集中の防止 |
| イノベーション | 相互運用性や知見の共有による革新の促進 |
「完全自動化の推進」は含まれていません。透明性はソースコードの全公開を必須とするものではなく、アカウンタビリティは会計処理の自動化ではありません。
高度なAIシステムに関係する事業者に共通の指針
2023年の G7 広島AIプロセスで合意された国際的な指針・行動規範を踏まえ、最先端の基盤モデルや生成AIシステムに関わる事業者に対して、開発から展開までのリスクの特定・軽減、脆弱性への対応、透明性の確保、電子透かしなどによる AI 生成コンテンツの識別などを求めるものです。開発者だけでなく提供者・利用者にも役割が示されています。中小企業限定の義務や価格の指針ではありません。
ケースで考える
採用選考に AI の書類スクリーニングを導入する場合は、学習データに性別や出身などの偏りがないか検証し(公平性)、AI 利用と判断基準を応募者に説明でき(透明性)、最終判断と責任は人間が負う体制にする(アカウンタビリティ)ことが原則に沿った取り組みです。人間が関与しない、利用を隠す、検証しない、という対応は原則に反します。
試験で問われる観点
- 3つの基本理念の名称と英語表記。
- 共通の指針10項目の名称と、それぞれの意味。10項目に含まれないものを選ばせる問題。
- 高度な AI システムに関する指針の出所(広島AIプロセス)と内容。