ディープフェイクとは
**ディープフェイク(深層偽造)**は、「ディープラーニング」と「フェイク(偽物)」を組み合わせた言葉で、実在の人物の顔や声を別の映像・音声に合成し、本人が言っていないことを言っているように見せる技術です。GAN や VAE、近年は拡散モデルが使われ、無料・安価なアプリで誰でも作れるようになっています。「専門家でなければ作れない」という認識は現状に合いません。
同じ技術は、映画の吹き替えでの口の動きの調整、故人の映像の復元、エンターテインメントなど正当な用途にも使われています。問題になるのは、本人の許可なく作り、人をだます目的で使う場合です。
ディープフェイクで使われる技術(GAN・VAE・拡散モデル)
試験では「ディープフェイクに使われる技術はどれか」が問われます。名前だけでなく、3つの仕組みの違いを押さえておくと、GAN と VAE を入れ替えたひっかけに対応できます。
- GAN(敵対的生成ネットワーク): 偽物を作る「生成器」と、本物か偽物かを見破る「識別器」の2つのネットワークを競わせて学習します。生成器は見破られないように、識別器は見破れるように上達し続けるので、本物に近い鮮明な画像が作れます。顔の入れ替えなど初期のディープフェイクの中心技術です。
- VAE(変分オートエンコーダ): 画像を「エンコーダ」で少数の数値(潜在変数)に圧縮し、「デコーダ」でその数値から画像に戻す仕組みです。圧縮した数値を少し動かすと、表情や向きを変えた顔を作れます。学習は安定していますが、GAN に比べると出力がぼやけやすい弱点があります。顔の特徴を取り出して別の顔に乗せる処理に使われます。
- 拡散モデル: 画像にノイズを少しずつ加えていく過程を学習し、逆にノイズから画像を復元することで生成します。画質が高く、文章から画像や動画を作る生成AIサービスの多くがこの方式です。近年のディープフェイクはこちらに移っています。
| GAN | VAE | 拡散モデル | |
|---|---|---|---|
| 仕組み | 生成器と識別器の競争 | 圧縮(潜在変数)して復元 | ノイズから段階的に復元 |
| 得意なこと | 鮮明な画像 | 安定した学習、特徴の操作 | 高画質、文章からの生成 |
| 弱点 | 学習が不安定になりやすい | 出力がぼやけやすい | 生成に時間がかかる |
| ディープフェイクでの役割 | 顔の入れ替え、表情の生成 | 顔の特徴の抽出と再構成 | 文章や画像からの偽映像・音声 |
「GAN は1つのネットワークで学習する」「VAE は2つのネットワークを競わせる」のように説明を入れ替えた選択肢が誤りです。
偽情報(ディスインフォメーション)
ディスインフォメーションは、だます・世論を操作するなどの意図をもって作られ、広められる偽情報です。悪意なく誤解によって広まる誤情報はミスインフォメーションと呼んで区別します。ディープフェイクは、本物そっくりの偽映像を安価に作れるため、ディスインフォメーションの手段として悪用される危険があります。
事件例
- 経営幹部になりすましたディープフェイク映像によるビデオ会議で送金を指示され、香港の企業の担当者が多額の資金を詐取された(2024年)。
- 政治家が実際には言っていない発言をしているように見せる偽動画の拡散。
- 著名な経営者や芸能人の顔と声を使った「確実に儲かる」投資詐欺の広告動画。
対応の基本
- 有名人が出ている、再生回数が多い、といった要素は本物である根拠にならない。
- 「確実に儲かる」「至急」のような断定・圧力は詐欺の典型。
- 本人や企業の公式発表など信頼できる情報源で事実を確認するまで、共有や登録をしない。事実確認前に拡散すると、偽情報を広める側に加担することになる。
法的な位置づけ
日本にはディープフェイクを包括的に規制する単独の法律はなく、肖像権、名誉毀損、著作権、詐欺罪など既存の法律で対処されています。「厳格に法律で規制されている」と断定する記述は公式サンプル問題でも誤りとして扱われています。本人の許可なく顔や声を合成して公開すれば、肖像権や名誉毀損の問題が生じます。
試験で問われる観点
- ディープフェイクの定義と使われる技術。GAN は生成器と識別器の競争、VAE は潜在変数への圧縮と復元、拡散モデルはノイズからの復元。
- ディスインフォメーション(意図的な偽情報)の定義。
- 精巧なものは AI でも見破れない場合がある。誰でも作れる。
- 事件例(なりすまし送金詐欺、偽動画、投資詐欺広告)と、閲覧者としての適切な対応。



