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AI開発委託契約(契約ガイドライン、4つのフェーズ、請負と準委任、精度保証、知財の帰属、NDA)

第9章 AIに関する法律と契約 / 節 6

シラバスのキーワード: AI・データの利用に関する契約ガイドライン請負契約準委任契約精度保証PoCNDA保守契約

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契約ガイドライン

経済産業省の「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」(2018年、2019年改訂)は、AI開発の特性(事前に精度が分からない、データの質に依存する、成果物の権利関係が複雑)を踏まえ、契約の考え方を整理したものです。

4つのフェーズと契約

フェーズ 内容 契約
アセスメント 少量のデータでモデル生成の可否を検証 秘密保持契約(NDA)
PoC 実際のデータで精度や効果を検証 PoC契約(導入検証契約)
開発 学習済みモデルの開発 開発契約
追加学習 運用中のデータで再学習 保守契約、追加学習契約

段階ごとに契約を結び、次に進むかを判断する探索的段階型の進め方が推奨されています。

請負と準委任

請負契約は成果物の完成を約束し、準委任契約は業務の遂行を約束します。AIは学習してみないと達成できる精度が分からず完成の定義が難しいため、準委任契約が適する場合が多いとされます。精度保証を安易に約束すると、未達の場合に契約違反となるリスクがあり、ガイドラインは精度保証に慎重な立場です。

権利の帰属

学習済みモデル、学習データ、学習用プログラム、ノウハウなどの権利は法律で自動的に決まらず、契約で帰属と利用条件を定めます。ベンダーが他の顧客向けに再利用できるか、委託元が第三者に提供できるかなどを明確にします。

試験で問われる観点

この節の練習問題(5問)

答えを見る前に選んでから開いてください。同じ問題は章別演習でランダム出題されます。

  1. 問1
    経済産業省の「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」が示すAI開発の契約に関する記述として、最も適切なものを選びなさい。
    1. 1AI開発をアセスメント、PoC、開発、追加学習の段階に分けずに1つの契約で全体を発注する一括型の進め方を提案しており、学習前でも精度を数値で保証できるため、作業の遂行を約束する準委任契約より、成果物の完成を約束する請負契約が適する場面が多いとしている
    2. 2AI開発ではデータの提供者とベンダーの間でNDA(秘密保持契約)を結ぶと学習データの利用が制限されるためNDAを避けるべきだとしており、精度を保証できない場合の責任はすべてベンダーが負うことを前提に、成果物の完成を約束する請負契約を原則としている
    3. 3学習済みモデルやその派生モデルの権利は法律で自動的にベンダー側に帰属するため契約で定める必要はないとしており、段階ごとの契約を結ぶとかえって権利関係が複雑になるため、アセスメントからPoC、開発までを1つの請負契約で行う進め方を推奨している
    4. 4AI開発をアセスメント、PoC、開発、追加学習の段階に分けて段階ごとに契約する探索的段階型の進め方を提案しており、学習前に精度を保証することが難しいため、成果物の完成を約束する請負契約より、作業の遂行を約束する準委任契約が適する場面が多いとしている
    答えと解説

    正解: 4

    AIは学習してみないと達成できる精度が分からないため、ガイドラインは段階的に契約を結ぶ探索的段階型を推奨し、精度保証を伴う請負契約は難しいとして準委任契約の活用を示しています。また、データや学習済みモデル、派生モデルの権利の帰属と利用条件は法律で一律に決まらないため、契約で明確に定める必要があり、データを開示する前にはNDAを締結することが基本です。

  2. 問2
    経済産業省の「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」が示す、AI開発を段階的に進める4つのフェーズの順序として正しいものを選びなさい。
    1. 1PoC → アセスメント → 追加学習 → 開発
    2. 2アセスメント → PoC → 開発 → 追加学習
    3. 3開発 → PoC → アセスメント → 追加学習
    4. 4追加学習 → 開発 → PoC → アセスメント
    答えと解説

    正解: 2

    ガイドラインは、AI開発を「アセスメント(少量のデータでモデル生成の可否を検証)」「PoC(実際のデータで精度などを検証)」「開発(学習済みモデルの開発)」「追加学習(運用中のデータで再学習)」の4段階に分け、各段階に応じた契約(秘密保持契約、PoC契約、開発契約、保守・追加学習契約など)を結ぶ探索的段階型の進め方を推奨しています。

  3. 問3
    AI開発をベンダーに委託する契約を検討している。契約上の整理として最も適切なものを選びなさい。
    1. 1学習済みモデルの著作権や学習データの権利は法律によって自動的に委託元に帰属するため契約で定める必要はなく、AIの精度は学習してみないと分からないことから、成果物の完成を約束する準委任契約ではなく作業の遂行を約束する請負契約が選ばれることが多い
    2. 2学習に使ったデータの権利は学習を実施したベンダーに移転するのが法律上の原則であるため、委託元がデータを引き続き利用するには契約で権利の返還を定める必要があり、開発は精度を保証する請負契約で行うことが法律で義務づけられている
    3. 3AIの精度は学習してみないと分からず事前の保証が難しいため、成果物の完成を約束する請負契約より、作業の遂行を約束する準委任契約が選ばれることが多く、学習済みモデルや学習データの権利帰属・利用条件は契約で明確にしておく
    4. 4AIの精度は他のシステム開発と同様に事前に見積もれるため、作業の遂行を約束する準委任契約より成果物の完成を約束する請負契約が選ばれることが多く、精度が目標に達しなければ常にベンダーの契約不履行となり、モデルの権利は当然に委託元に帰属する
    答えと解説

    正解: 3

    AI開発では達成できる精度が事前に確定できないため、ガイドラインは請負契約よりも準委任契約が適する場合が多いとしています。学習済みモデル、学習データ、ノウハウなどの権利帰属や利用条件は法律で自動的に決まるものではなく、当事者間の契約で定める必要があります。精度保証を安易に約束しないことも重要です。

  4. 問4
    「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」で、少量のデータを使ってモデル生成の可否を検証するアセスメントの段階で結ぶ契約として、最も適切なものを選びなさい。
    1. 1秘密保持契約(NDA)
    2. 2PoC契約(導入検証契約)
    3. 3開発契約
    4. 4保守契約
    答えと解説

    正解: 1

    アセスメントの段階では、少量のデータを渡してモデル生成の可否を検証するため、データを守る秘密保持契約(NDA)を結びます。PoC契約は実際のデータで精度や効果を検証する段階、開発契約は学習済みモデルを開発する段階、保守契約は運用中のデータで追加学習する段階の契約です。

  5. 問5
    AIベンダーとPoC契約を結んで実際のデータで検証したところ、目標の精度に届かなかった。契約ガイドラインの考え方に沿った次の対応として最も適切なものを選びなさい。
    1. 1結果を踏まえ、開発に進むか条件を見直すかを判断する
    2. 2開発契約をすぐに結び、開発の中で精度を上げる前提で進める
    3. 3次の段階でベンダーに精度保証を約束させたうえで開発に進む
    4. 4PoCを打ち切り、追加学習契約を結んで運用中のデータで再学習する
    答えと解説

    正解: 1

    ガイドラインは段階ごとに契約を結び、その結果を見て次に進むかを判断する探索的段階型の進め方を推奨しています。PoCの結果を踏まえずに開発契約へ進むのはこの考え方に反し、精度保証を安易に約束させると未達の場合に契約違反となるリスクがあるため、ガイドラインは精度保証に慎重な立場です。追加学習は開発したモデルを運用中のデータで再学習する段階で、PoCの直後に行うものではありません。