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特許法(発明、新規性・進歩性、特許権と著作権のすみ分け、職務発明、営業秘密との違い)

第9章 AIに関する法律と契約 / 節 3

シラバスのキーワード: 発明新規性進歩性特許権知的財産権発明者職務発明

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発明と特許権

発明は「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」で、特許を受けるには新規性(出願前に公知でない)、進歩性(当業者が容易に思いつかない)、産業上の利用可能性が必要です。特許権は出願・審査を経て登録されて発生し、存続期間は出願から原則20年です。出願内容は公開されます。

特許権と著作権のすみ分け

特許権 著作権
保護対象 技術的なアイデア(発明) 表現
発生 出願・審査・登録 創作と同時
期間 出願から20年 著作者の死後70年
AIでの例 新しい学習手法、AIを用いた装置や方法 プログラムのソースコード、解説文

AIのアルゴリズム自体は数学的な手法として特許の対象にならないことがありますが、ハードウェアと結びついた具体的な処理や用途は特許になりえます。

発明者と職務発明

発明者は自然人に限られ、AIは発明者になれないとする判断が各国で示されています。従業員が職務として行った発明を職務発明といい、契約や勤務規則で定めれば特許を受ける権利を最初から会社に帰属させることができ、従業員は相当の利益を受ける権利を持ちます。

営業秘密との使い分け

特許は公開の代わりに独占権を得る制度です。営業秘密として不正競争防止法で保護する場合は公開の必要がなく期間の制限もありませんが、秘密管理を続ける必要があり、独自に開発した第三者の実施は止められません。模倣されやすい技術は特許、リバースエンジニアリングが困難な技術やデータは営業秘密という使い分けが考えられます。

試験で問われる観点

この節の練習問題(5問)

答えを見る前に選んでから開いてください。同じ問題は章別演習でランダム出題されます。

  1. 問1
    特許権に関する記述として、最も適切なものを選びなさい。
    1. 1特許権は思想や感情を創作的に表現した著作物を保護する権利で、新規性や進歩性の審査は不要であり、創作と同時に自動的に発生する。プログラムのソースコードも表現として保護されるが、アイデアは保護されない
    2. 2特許権は物品の形状や模様など美感を起こさせるデザインを保護する権利で、新規性と創作非容易性の要件を満たし、特許庁に出願して審査を経ることで発生する。技術的思想は保護の対象に含まれず、実用新案として別途登録する
    3. 3特許権は商品やサービスを識別するための名称やロゴなどの標章を保護する権利で、識別力があること(識別性)と先に登録された標章と類似しないこと(非類似性)の要件を満たし、特許庁に出願して登録を受けることで発生する
    4. 4特許権は自然法則を利用した技術的思想の創作である発明を保護する権利で、新規性(公知でないこと)と進歩性(当業者が容易に思いつかないこと)などの要件を満たし、特許庁に出願して審査を経ることで発生する
    答えと解説

    正解: 4

    特許権は発明というアイデア(技術的思想)を保護し、著作権が表現を保護するのと対照的です。出願・審査・登録によって発生し、出願から原則20年間、発明を独占的に実施できます。AI関連では、学習方法やモデルの構造、AIを用いた装置などが発明として特許の対象になりえますが、数学的なアルゴリズムそのものは自然法則を利用していないとして対象外になることがあります。名称やロゴを保護するのは商標権です。

  2. 問2
    特許に関する記述として、誤っているものを選びなさい。
    1. 1特許を取得した発明は出願内容が非公開のまま保護されるため、営業秘密との違いはない
    2. 2従業員が職務上行った発明を職務発明といい、契約や勤務規則で会社に特許を受ける権利を帰属させることができ、その場合従業員は相当の利益を受ける権利を持つ
    3. 3特許は出願内容が公開される代わりに独占権を得る制度であり、公開したくない技術は営業秘密として管理する選択肢がある
    4. 4発明者となれるのは自然人であり、AIそのものは発明者になれないというのが日本を含む多くの国の扱いである
    答えと解説

    正解: 1

    特許制度は、発明の内容を公開して技術の発展に寄与させる代わりに一定期間の独占権を与える仕組みで、出願から1年6か月で内容が公開されます。秘密のまま保護したい情報は不正競争防止法の営業秘密として管理するという使い分けがあり、「非公開のまま保護される」という記述は誤りです。職務発明の扱い、AIが発明者になれないこと(日本では2025年の知財高裁判決でも自然人に限るとされました)に関する記述は正しい内容です。

  3. 問3
    自社で開発した独自の学習アルゴリズムを、特許出願するか営業秘密として保護するかを検討している。両者の違いの説明として最も適切なものを選びなさい。
    1. 1特許と営業秘密はどちらも特許庁への登録によって効力が生じる制度で、保護の内容や期間は変わらず、他社が独自に同じ技術を開発した場合にはいずれも差し止めができない
    2. 2アルゴリズムは自然法則を利用した発明に当たらないため特許の対象外であり、営業秘密として保護するにも公開して登録する必要があるため、いずれの方法でも独占権は得られない
    3. 3特許は出願内容が公開される代わりに一定期間の独占権が得られ、営業秘密は公開されないが秘密として管理する必要があり、他社が独自に同じ技術を開発した場合には差し止められない
    4. 4特許は出願内容を秘密にしたまま無期限に保護され、営業秘密は内容が公開される代わりに出願から20年間の独占権が得られ、他社が独自に同じ技術を開発した場合でも差し止められる
    答えと解説

    正解: 3

    特許権は出願から原則20年の独占権を得られますが、出願内容は公開され、他社に技術が知られます。営業秘密として不正競争防止法で保護する場合は公開の必要がなく期間の制限もありませんが、秘密管理性などの要件を満たし続ける必要があり、独自に開発した第三者の実施は止められません。技術の性質や模倣のされやすさに応じて使い分けます。

  4. 問4
    特許権と著作権の違いに関する記述として、誤っているものを選びなさい。
    1. 1特許権は技術的なアイデアを保護し、著作権は表現を保護する
    2. 2特許権は、出願・審査を経て登録されることで発生する
    3. 3著作権は、特許庁への登録によって初めて発生する
    4. 4特許権の存続期間は、原則として出願から20年である
    答えと解説

    正解: 3

    著作権は創作と同時に発生し、登録などの手続きは不要です。特許庁への登録が必要なのは特許権のほうです。特許権が技術的なアイデア(発明)を、著作権が表現を保護すること、特許権が出願・審査・登録を経て発生し存続期間が原則として出願から20年であることは、いずれも正しい記述です。

  5. 問5
    AIに関する技術と特許の関係の説明として、最も適切なものを選びなさい。
    1. 1AIに関する技術は数学的な手法にすぎないため、どのような形でも特許の対象にならない
    2. 2アルゴリズム自体は対象外となりうるが、ハードウェアと結びついた処理や用途は対象になりうる
    3. 3AIが自律的に考案した手法は、そのAIを発明者として特許を出願できる
    4. 4特許権は発明と同時に発生するため、AIの学習手法も出願や登録なしに保護される
    答えと解説

    正解: 2

    AIのアルゴリズム自体は数学的な手法として特許の対象にならないことがありますが、ハードウェアと結びついた具体的な処理や用途は特許になりえます。そのため、どのような形でも対象にならないとするのは誤りです。発明者は自然人に限られAIは発明者になれず、特許権は出願・審査を経て登録されて発生するため、手続きなしに保護されることもありません。