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著作権法(著作物の要件、AI生成物の著作権、学習データと第30条の4、利用規約)

第9章 AIに関する法律と契約 / 節 2

シラバスのキーワード: 著作物創作性著作権AI生成物著作権侵害利用規約

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著作物と著作権

著作物は「思想又は感情を創作的に表現したもの」で、文芸・学術・美術・音楽の範囲に属するものです。創作性があれば芸術的な価値は問われず、著作権は創作と同時に発生し、登録などの手続きは不要です。単なるデータや事実、アイデアそのものは著作物ではありません。プログラムは著作物ですが、学習済みモデルのパラメータが著作物にあたるかは議論があります。

AI生成物の著作権

著作者は人(法人を含む)であり、AI自身は著作者になれません。AIが自律的に生成したものは「思想又は感情の創作的な表現」にあたらず著作物になりませんが、人がAIを道具として使い、創作的な寄与(詳細な指示、生成物の選択や修正など)をした場合はその人の著作物になりえます。プロンプトを入力しただけで常に著作物になるわけではありません。

学習データの利用:第30条の4

著作物に表現された思想や感情を自ら享受する目的でない利用(情報解析など)は、著作権者の利益を不当に害しない範囲で許諾なく行えます。Web上の画像を収集して画像認識モデルを学習させるのは典型的な情報解析です。一方、特定の作家の作品だけを学習させてその表現を出力させる目的や、学習に名を借りて著作物をそのまま公開する行為は対象外です。

生成物による侵害

AI生成物が既存の著作物と類似し(類似性)、それに基づいて作られた(依拠性)と認められれば著作権侵害になります。学習データに含まれていた著作物と似た出力が生成される場合、依拠性が認められる可能性があります。生成物を利用する側は、既存の著作物と似ていないかの確認が必要です。

利用規約とライセンス

生成AIサービスの利用規約には、生成物の権利の帰属、商用利用の可否、入力データの学習利用の有無などが定められています。オープンソースのモデルやデータセットもライセンス(商用利用・再配布・改変の条件)に従う必要があります。

試験で問われる観点

この節の練習問題(6問)

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  1. 問1
    著作権法における「著作物」の要件と著作権の発生に関する記述として最も適切なものを選びなさい。
    1. 1著作物は「思想又は感情を創作的に表現したもの」で、単なるデータや事実、ありふれた表現は含まれない。著作権は創作と同時に発生し、登録などの手続きは不要である
    2. 2著作物は「産業上利用できる新規性のある技術的なアイデア」で、表現の形式は問わない。著作権は特許庁への出願と審査を経て発生し、創作から20年で消滅する
    3. 3著作物は「思想又は感情を創作的に表現したもの」で、単なるデータや事実も労力をかけて集めれば含まれる。著作権は文化庁に登録した時点で発生し、登録しないものは保護されない
    4. 4著作物は「思想又は感情を創作的に表現したもの」で、単なるデータや事実は含まれない。著作権は公表と同時に発生するため、未公表の作品は自由に利用でき、創作から1年で消滅する
    答えと解説

    正解: 1

    著作物の要件は、思想または感情を含むこと、創作性があること、表現されていること、文芸・学術・美術・音楽の範囲に属することです。アイデアそのもの、事実、単なるデータ、誰が書いても同じになる表現は保護されません。著作権は無方式主義により創作の時点で自動的に発生し、原則として著作者の死後70年まで存続します。登録が必要なのは特許権や商標権です。

  2. 問2
    日本の著作権法第30条の4に関する記述として、最も適切なものを選びなさい。
    1. 1情報解析のために著作物を利用する場合は、事前に著作権者全員から許諾を得ることを義務付けており、AIの学習に利用する著作物は権利者が明示的に許可したデータセットに限られる根拠となっている
    2. 2著作物に表現された思想や感情を享受することを目的としない利用(情報解析など)は、著作権者の利益を不当に害する場合を除き、許諾なく行えると定めており、AIの学習のための著作物の利用の根拠となっている
    3. 3著作物に表現された思想や感情を享受することを目的とする利用(鑑賞など)であっても、営利を目的としない場合は許諾なく行えると定めており、AIが生成した画像を個人が楽しむための利用の根拠となっている
    4. 4AIが生成した画像や文章はすべて著作物として保護されると定めており、生成物の著作権はプロンプトを入力した利用者に帰属し、AI開発企業は生成物の利用に関与できないことの根拠となっている
    答えと解説

    正解: 2

    第30条の4は2018年改正で整備された規定で、機械学習のための情報解析のように、著作物の表現を人が鑑賞・享受する目的ではない利用を原則として適法としています。ただし、学習データの表現をそのまま出力させる目的が併存する場合や、著作権者の利益を不当に害する場合は適用されません。生成・利用段階の侵害は通常どおり類似性と依拠性で判断され、AI生成物の著作物性は人間の創作的寄与の有無で個別に判断されます。

  3. 問3
    AI生成物の利用に関する記述として、最も適切なものを選びなさい。
    1. 1AI生成物が既存の著作物と類似していても、AIが自律的に生成したものには人間の創作行為が介在しないため著作権侵害にはならない。また生成AIサービスの利用規約は法的な効力を持たないため、商用利用の可否は利用者が自由に判断してよい
    2. 2AI生成物には誰の権利も及ばないため、他社が生成したAI生成物を無断で自社製品に使っても問題にならない。また生成AIサービスの利用規約は開発者向けの技術文書であり、商用利用や権利の帰属について確認する必要はない
    3. 3AI生成物が既存の著作物と類似し、依拠性が認められれば、AIを使ったかどうかにかかわらず著作権侵害となりうる。また生成AIサービスの利用規約で商用利用や権利の帰属が定められているため、利用前に確認する必要がある
    4. 4AI生成物は常に自動的に利用者の著作物となり、他人の著作物に類似していても侵害にはならない。ただし生成AIサービスの利用規約で権利の帰属が提供者に定められている場合は、利用者は生成物を商用利用できなくなる
    答えと解説

    正解: 3

    文化庁の「AIと著作権に関する考え方」では、AI生成物の著作権侵害は既存著作物との類似性と依拠性で判断され、利用者が既存著作物を認識していた場合や学習データに含まれていた場合は依拠性が認められうるとされています。AI生成物の著作物性は人間の創作的寄与の程度で個別に判断され、自動的に利用者の著作物になるわけではありません。利用規約は契約として効力があり、商用利用の可否や権利帰属を確認する必要があります。

  4. 問4
    日本の著作権法第30条の4に照らして、著作権者の許諾なく行える可能性が最も高いものを選びなさい。
    1. 1Web上の大量の画像を収集して、画像認識モデルの学習データとして利用する
    2. 2特定の画家の作品だけを集めて学習させ、その画風を再現した画像を生成して販売する目的で、その画家の作品の表現を出力させる
    3. 3収集した小説をそのままの形で自社サイトに掲載し、利用者が読めるようにする
    4. 4収集した写真を加工せずに広告のビジュアルとして使用する
    答えと解説

    正解: 1

    第30条の4は、著作物に表現された思想や感情を自ら享受する目的でない利用(情報解析など)を、著作権者の利益を不当に害しない範囲で許諾なく認めています。画像認識モデルの学習は典型的な情報解析です。一方、特定の作家の表現を出力させる目的や、小説の掲載、写真の広告利用は著作物を享受させる利用であり、この規定の対象外です。

  5. 問5
    AIが生成した画像や文章が著作物として保護されるかについて、日本で確立している考え方として最も適切なものを選びなさい。
    1. 1AIが自律的に生成したものであっても「思想又は感情を創作的に表現したもの」にあたり著作物となるが、著作者はAI自身ではなくAIの開発企業であり、プロンプトを入力した人は詳細な指示や生成物の選択・修正をしても著作者にはなれない
    2. 2AIが自律的に生成したものは「思想又は感情を創作的に表現したもの」にあたらず著作物とならないが、人がAIを道具として使い、創作的な寄与(詳細な指示や生成物の選択・修正など)をした場合はその人の著作物になりうる
    3. 3AIが生成したものは、人がAIを道具として使い詳細な指示や生成物の選択・修正を行った場合であっても「思想又は感情を創作的に表現したもの」にあたらず著作物とはならないため、保護を受けるには特許庁への登録が必要になる
    4. 4AIが生成したものは、人の創作的な寄与(詳細な指示や生成物の選択・修正など)の有無にかかわらず、プロンプトを入力した人が「思想又は感情を創作的に表現した」ものとみなされ、その人の著作物として例外なく保護される
    答えと解説

    正解: 2

    著作権法上の著作者は人(または法人)であり、AI自身は著作者になれません。AIが自律的に生成したものは著作物ではなく、人が創作意図を持ちAIを道具として創作的に関与した場合にのみ、その人の著作物と認められると整理されています。プロンプトを入力しただけで常に著作物になるわけではなく、開発企業に自動的に帰属することもありません。

  6. 問6
    AI生成物が既存の著作物の著作権を侵害するかを判断する際に用いられる2つの観点の組み合わせとして、最も適切なものを選びなさい。
    1. 1新規性と進歩性
    2. 2秘密管理性と有用性
    3. 3類似性と依拠性
    4. 4創作性と非公知性
    答えと解説

    正解: 3

    AI生成物が既存の著作物と類似し(類似性)、それに基づいて作られた(依拠性)と認められれば、著作権侵害になります。新規性と進歩性は特許を受けるための要件、秘密管理性と有用性は不正競争防止法の営業秘密の要件です。創作性は著作物の要件、非公知性は営業秘密の要件であり、侵害の判断の観点ではありません。