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RPAとAIエージェントの違い:定型処理と判断処理をどう切り分けるか

第1章 生成AIとAIエージェントの基礎 / 節 4

シラバスのキーワード: RPAAIエージェント定型処理判断処理ハイパーオートメーションルールベース

本文を読んだあと、覚えているか確認してください。

「全部 AI にすればいい」は正しいか

「請求書の処理を自動化したい」と言われたとき、AIエージェントを持ち出す前に立ち止まる問いがあります。「それはルールベースの自動化で十分ではないか」 です。

RPA(Robotic Process Automation) は、人がパソコンで行う操作を記録し、そのとおりに繰り返すソフトウェアです。「このシステムを開く、この欄の値をコピーする、別のシステムに貼る」という決まった手順を、人より速く、疲れずに、間違えずにこなします。ルールが正しければ正確さは 100% です。

ただし弱点があります。想定していない入力が来る、画面のレイアウトが変わる、例外的なケースが混ざる。こうなると RPA は止まります。「考える」「読み取る」「解釈する」ことができないからです。

AIエージェントはその逆です。自由な文章を読み、文脈を解釈し、判断できます。しかし確率で動くので、同じ入力でも毎回同じ答えになるとは限らず、ハルシネーションのリスクもあります。

つまり、RPA は「正確だが融通が利かない」、AIエージェントは「柔軟だが確率的」 です。どちらが優れているかではなく、業務の性質で使い分けます。試験で「AIエージェントは常に RPA より優れている」という選択肢があれば誤りです。

定型処理か判断処理か:3つの見極め

あるステップを RPA(ルールベース)に任せるか、AIエージェントに任せるかは、次の3つで見ます。

  1. 例外的な判断が必要か。 手順が完全に書き下せて例外がないなら、ルールベースで十分です。「読んで判断する」場面があるなら AI の出番です。
  2. 入力が定型か。 CSV や決まった形式の帳票ならルールベース。メール、チャット、自由記述の文章なら LLM が必要です。
  3. 例外の頻度はどうか。 例外が月に1件ならルールベースで止まったときに人が対応すればよい。例外が頻発するなら、止まるたびに人が介入して工数が増えるので、AI で読み取る設計が向きます。

たとえば「発注書の PDF を添付から取り出す」は定型処理、「発注書から品目・数量・納期を読み取る」は書式が取引先ごとに違うので判断処理、です。

ハイパーオートメーション:読むのは AI、操作は定型処理

実際の業務は、1本の流れの中に定型処理と判断処理が混ざっています。そこで、業務をステップごとに切り分けて、それぞれに最適な技術を割り当てる考え方が ハイパーオートメーション です。

受注処理を例にすると、

  1. メールの添付ファイルを取得する → 定型処理
  2. 発注書から品目・数量・納期を読み取る → AI
  3. 在庫と照合して納期を判断する → AI
  4. 受注管理システムに登録する → 定型処理
  5. 確認メールを送る → 定型処理

基本の役割分担は 「AI が読み取り・判断し、定型処理がシステムを操作する」 です。AI にシステム操作までさせる必要はなく、定型処理に読み取りをさせることもできません。

もう1つ重要なのは、いまの業務をそのまま自動化しないことです。非効率な手順を RPA や AI で高速に回しても、非効率が速くなるだけです。AIエージェントを前提に業務の流れそのものを作り直す、という考え方は第2章の BPR につながります。

試験で問われる観点

この節の練習問題(2問)

答えを見る前に選んでから開いてください。同じ問題は章別演習でランダム出題されます。

  1. 問1
    次の業務タスクのうち、ルールベースの自動化ではなくAIエージェントによる処理が必要なものとして最も適切なものはどれか。
    1. 1顧客からの自由記述のクレームメールを読み、内容に応じて返信の方針を判断する
    2. 2在庫数が設定値を下回ったら、あらかじめ決めた数量で発注データを作成する
    3. 3毎月1日に基幹システムから売上データをCSVで出力し、所定のフォルダに保存する
    4. 4定型フォーマットの申請書に記載された数値を、決められた列にそのまま転記する
    答えと解説

    正解: 1

    定型処理か判断処理かは、例外的な判断が必要か、入力が定型か、例外の頻度はどうかの3つで見極めます。自由記述のメールは非構造化データで、内容の解釈と文脈に応じた判断が要るためAIエージェントの領域です。CSVの定期出力、定型帳票からの転記、閾値による発注は、手順と条件を完全に定義できるためRPAやワークフローなどルールベースの自動化で十分です。

  2. 問2
    受注処理を「添付ファイルの取得 → 発注書からの品目・数量・納期の抽出 → 在庫照合と納期判断 → 受注管理システムへの登録 → 確認メール送信」の5ステップに分けた。ハイパーオートメーションの考え方に沿った技術の割り当てとして最も適切なものはどれか。
    1. 15ステップすべてをAIエージェントに任せ、システム操作も含めて確率的な判断で処理させることで柔軟性を最大にする
    2. 2添付取得・システム登録・メール送信は定型処理、発注書からの抽出と在庫照合・納期判断はAIが担うように、ステップごとに最適な技術を割り当てる
    3. 35ステップすべてをRPAで処理し、発注書の記載ゆれや例外は処理を停止して人が対応することで正確性を最優先にする
    4. 4AIエージェントを導入する場合はRPAを廃止する必要があるため、既存のRPAを撤去してから全体をAIで作り直す
    答えと解説

    正解: 2

    ハイパーオートメーションは、業務プロセスの各ステップを定型処理とAI処理に切り分け、それぞれに最適な技術を割り当てるアプローチです。基本の役割分担は、AIが読み取りと判断、定型処理がシステム操作です。RPAはルールが正しければ正確ですが非構造化データや例外に弱く、AIは柔軟ですが確率的なため、置き換えではなく使い分けが原則です。