エージェントは「いつ」動き出すのか
人に仕事を頼むとき、頼み方は3通りあります。「今これやって」と声をかける。「毎週月曜の朝に出して」と決めておく。「在庫が10を切ったら発注して」と条件を決めておく。AIエージェントも同じで、いつ・何をきっかけに動き出すかを設計します。これを起動タイプと呼び、3つに分類します。
| 起動タイプ | きっかけ | 例 |
|---|---|---|
| 指示型 | 人がその場で指示する | チャットで質問する、ボタンを押す |
| 定時型 | 決めた時刻・曜日・頻度 | 毎朝8時にニュースを要約して配信、毎週月曜に週次レポート |
| 条件型 | 特定の出来事の発生 | 在庫が一定数を下回ったら発注書を作る、エラーを検知したらチケットを起票 |
ChatGPT や Claude にプロンプトを打ち込むのは、すべて指示型です。これが基本形です。
見分け方:AI に直接頼んだか
指示型と条件型は、見た目が似ていて迷いやすい組み合わせです。見分けるポイントは 「人が AIエージェントに直接依頼したか」 です。
- 営業担当者がチャットで「この顧客向けのメール案を書いて」と頼む → 指示型。
- 営業担当者が CRM(顧客管理システム)に新しいリードを登録した。それを検知して AI が自動でメール案を作った → 条件型。人は CRM を操作しただけで、AI には何も頼んでいません。
定時型は、いつ動くかと何をするかが固定されているので、導入効果が見えやすいのが特徴です。「毎週月曜の9時にレポートが届くようになった」は誰にでも分かります。そのため、初めての導入や効果検証に向きます。
起動タイプと自律性レベルは別の話
前の節で学んだ自律性の4段階(反応型・支援型・協働型・自律型)と、この節の起動タイプは、独立した設計判断です。組み合わせは自由です。
- メール対応: 条件型(受信を検知して起動)× 協働型(定型は自動返信、複雑なものは人へ)
- チャット対応: 指示型(人が質問)× 支援型(回答案を出して人が確認)
試験では「条件型で起動し、定型は自動実行、複雑なものはエスカレーション」という設計を見せて、起動タイプと自律性レベルの組み合わせを答えさせる問題が出ます。「条件型だから自律型」のように、2つを混同させる選択肢がひっかけです。
また、1つのエージェントが複数の起動タイプで動くのは実務では普通です。ヘルプデスク AI が、チャットでは指示型、メール受信では条件型、週次集計では定時型、と場面ごとに使い分けることに問題はありません。ただし同時にすべてを作るのではなく、効果の大きいものから順に入れます。
現場に負荷をかけない設計
導入したのに使われない。これは AI 導入でよく起きる失敗で、第7節で形骸化リスクとして扱います。原因の多くは「現場の手間が増えた」ことです。別の画面を開かせる、同じ内容を転記させる、といった追加作業が1つ入るだけで、人は元のやり方に戻ります。
現場に負荷をかけない設計とは、いまの業務の流れを変えずに AI を組み込むことです。条件型はその代表です。CRM に登録する、メールが届く、ファイルが保存される、という「もともとやっている操作」をきっかけにすれば、現場は何も新しいことをしなくて済みます。起動タイプの選択は、使われ続けるかどうかに直結する判断です。
試験で問われる観点
- 3つの動作(チャットで依頼/毎週月曜9時に自動配信/CRM 登録を検知して自動生成)を指示型・定時型・条件型に振り分ける。
- 指示型と条件型の見分け方は「AI に直接依頼したかどうか」。
- 定時型は実行タイミングと処理内容が固定されるため、導入効果が見えやすく初期導入に向く。
- 起動タイプと自律性レベルは独立した判断。「条件型×協働型」のような組み合わせを正しく読む。
- 条件型は現場に追加作業を求めない設計になりやすく、形骸化リスクの対策になる。