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AIの歴史:3回のブームと2回の冬

第1章 AI(人工知能) / 節 6

シラバスのキーワード: 第一次AIブーム探索推論第二次AIブームエキスパートシステムAIの冬第三次AIブームビッグデータ

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3回のブームを時系列で

時期 ブーム 中心技術 限界・終わり方
1950年代後半〜1960年代 第一次AIブーム 探索・推論 迷路やパズルのような「トイプロブレム」しか解けず、現実の複雑な問題に対応できなかった
1980年代 第二次AIブーム エキスパートシステム 専門家の知識をルールとして書き出す作業(知識獲得)が膨大で、例外に対応できなかった
2000年代後半〜現在 第三次AIブーム ビッグデータ、ディープラーニング 継続中。生成AIの登場もこの延長

ブームとブームの間の停滞期をAIの冬と呼びます。冬は2回ありました。

第一次AIブーム:探索と推論

ダートマス会議(1956年)の後、コンピュータに探索と推論をさせる研究が進み、迷路の解法や定理の証明などで成果が出ました。しかし、現実の問題は選択肢が爆発的に多く、当時の計算能力では扱えなかったため、期待は急速にしぼみました。

第二次AIブーム:エキスパートシステム

医師や技術者などの専門家が持つ知識を「もし〜なら〜」というルールの形で大量に記述し、その分野の判断を再現しようとしたエキスパートシステムが中心でした。医療診断や化学分析で実用例も出ましたが、知識を書き出す作業が膨大で、書かれていない例外に対応できないという限界があり、再び冬を迎えました。

第三次AIブーム:ビッグデータとディープラーニング

インターネットの普及で学習に使える大量のデータ(ビッグデータ)が集まり、GPU などで計算能力が向上し、ディープラーニングが画像認識で飛躍的な成果を上げたことで、2000年代後半から現在まで続くブームが始まりました。2012年の画像認識コンテストでディープラーニングを使ったチームが圧勝したことが象徴的な出来事です。2022年の ChatGPT 登場以降の生成AIの広がりも、このブームの中にあります。

試験で問われる観点

この節の練習問題(6問)

答えを見る前に選んでから開いてください。同じ問題は章別演習でランダム出題されます。

  1. 問1
    1950年代後半から1960年代の第一次AIブームの中心となった技術と、ブームが終わった主な理由の組み合わせとして正しいものを1つ選びなさい。
    1. 1ディープラーニングが中心で、多層のネットワークを学習させるための計算資源とデータが当時は不足していた。
    2. 2統計的機械学習が中心で、大量のデータを集めるためのインターネットが存在せず、学習データが不足していた。
    3. 3探索・推論が中心で、迷路やパズルのような単純な問題は解けても現実の複雑な問題には対応できなかった。
    4. 4エキスパートシステムが中心で、専門家の知識をルールとして記述する作業が膨大になり、知識を集めきれなかった。
    答えと解説

    正解: 3

    第一次AIブームでは、探索と推論によってパズルや迷路などを解くことができ期待が高まりましたが、こうした「トイプロブレム」しか解けず、現実の複雑な問題には歯が立たなかったため冬の時代に入りました。エキスパートシステムと知識獲得の限界は1980年代の第二次ブーム、統計的機械学習の普及は1990年代以降、ディープラーニングは2000年代後半からの第三次ブームの話で、時期が異なります。

  2. 問2
    1980年代の第二次AIブームを象徴する技術である「エキスパートシステム」の説明として、最も適切なものを1つ選びなさい。
    1. 1大量の事例データから統計的に規則を自動で抽出し、専門家の判断を学習しようとしたシステム
    2. 2迷路やパズルなど限定された問題を、探索と推論によって解くことを目指した第一次ブームのシステム
    3. 3画像や音声の特徴を多層のニューラルネットワークで自動的に抽出し、認識を行うシステム
    4. 4専門家の知識をルールとしてコンピュータに与え、その分野の判断を再現しようとしたシステム
    答えと解説

    正解: 4

    エキスパートシステムは、医師や技術者などの専門家が持つ知識を「もし〜なら〜」というルールの形で大量に記述し、その分野の判断を再現しようとしたシステムです。しかし知識をすべて書き出す作業(知識獲得)が膨大で、例外的な状況にも対応できず、ブームは再び冬の時代を迎えました。画像から特徴を自動学習するのはディープラーニング、自然な会話ができるのは生成AI、検索して要約するのは検索・要約技術で、いずれも時代と技術が異なります。

  3. 問3
    2000年代後半から続く第三次AIブームが起きた背景として、最も適切なものを1つ選びなさい。
    1. 1インターネットの普及によるビッグデータの蓄積、計算能力の向上、ディープラーニングの実用化が重なった。
    2. 2専門家の知識をルールとして書き出すエキスパートシステムが成熟し、知識獲得の作業が自動化された。
    3. 3探索や推論のアルゴリズムが完成し、コンピュータが人間と同等の汎用知能(AGI)を獲得した。
    4. 4政府がAIの利用を義務づける法律を制定し、企業や行政機関へのAI導入が一斉に進んだ。
    答えと解説

    正解: 1

    第三次AIブームは、インターネットの普及で学習に使える大量のデータ(ビッグデータ)が集まり、GPUなどで計算能力が向上し、ディープラーニングが画像認識などで飛躍的な成果を上げたことで始まりました。生成AIの登場もこの流れの延長にあります。専門家の知識のルール化が自動化されたわけではなく、AGI(汎用人工知能)は未実現で、AIの利用を義務化する法律も存在しません。

  4. 問4
    第三次AIブームの背景に関する記述として、不適切なものを1つ選びなさい。
    1. 1人間と同等の汎用的な知能を持つAGIが実現した
    2. 2インターネットの普及で学習に使える大量のデータが集まるようになった
    3. 3GPUなどの発達で計算能力が大きく向上した
    4. 4ディープラーニングが画像認識で飛躍的な成果を上げた
    答えと解説

    正解: 1

    第三次AIブームの背景は、ビッグデータ、計算能力の向上、ディープラーニングの成果の3つです。AGI(強いAI)は実現しておらず、ブームの背景として挙げるのは誤りです。

  5. 問5
    「ベテラン医師の診断の知識を『もし〜なら〜』のルールとして大量に書き出し、診断を再現するシステム」が中心だったAIブームと、その限界の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
    1. 1第二次AIブーム。計算能力が足りず、探索の選択肢が爆発的に増えて処理できなかった
    2. 2第二次AIブーム。知識をルールとして書き出す作業が膨大で、書かれていない例外に対応できなかった
    3. 3第一次AIブーム。迷路やパズルのような単純な問題しか解けず、現実の問題に対応できなかった
    4. 4第三次AIブーム。大量のデータと計算能力が必要で、個人では扱えなかった
    答えと解説

    正解: 2

    専門家の知識をルールとして記述して判断を再現するエキスパートシステムは、1980年代の第二次AIブームの中心技術です。限界は、知識を書き出す作業(知識獲得)が膨大で、書かれていない例外に対応できなかったことでした。トイプロブレムしか解けなかったのは第一次ブーム、探索の選択肢の爆発も第一次ブームの限界です。

  6. 問6
    AIの歴史における「AIの冬」の説明として、最も適切なものを1つ選びなさい。
    1. 1ダートマス会議の前に研究者が冬季に集まって議論した、AI研究の準備期間である
    2. 2第三次AIブームの終わりとされる時期で、2020年代に入ってから始まった停滞である
    3. 3ブームの後に期待がしぼみ、AI研究が停滞した時期で、これまでに2回あった
    4. 4ディープラーニングが登場した直後に起きた、計算機の供給不足による一時的な停滞である
    答えと解説

    正解: 3

    AIの冬は、ブームとブームの間に期待がしぼんで研究が停滞した時期で、第一次ブームの後と第二次ブームの後の2回ありました。ディープラーニング直後の停滞や、ダートマス会議前の準備期間という説明は誤りで、第三次ブームは現在も続いています。