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知識表現とエキスパートシステム(MYCIN、意味ネットワーク、オントロジー、ワトソン)

第2章 人工知能をめぐる動向 / 節 2

シラバスのキーワード: エキスパートシステムDENDRALマイシン (MYCIN)インタビューシステム意味ネットワークis-aの関係・has-aの関係・part-ofの関係CycプロジェクトオントロジーセマンティックWebイライザ (ELIZA)ワトソン東ロボくんデータマイニングウェブマイニング

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エキスパートシステム

専門家の知識をif-thenのルールとして記述し、推論によって専門家のような判断を行うシステムです。DENDRAL(1960年代、有機化合物の構造を質量分析データから推定)、MYCIN(1970年代、スタンフォード大学、血液中の細菌感染症の診断と抗生物質の処方)が代表例です。MYCINは専門医に迫る精度を示しましたが、責任の所在などの問題から実用化には至りませんでした。

知識を獲得するために専門家に質問を繰り返して知識を引き出すインタビューシステムも作られましたが、専門家の知識は言語化しにくく矛盾も多いため、知識獲得のボトルネックは解消できませんでした。

知識表現

意味ネットワークは概念をノード、関係を矢印で表すグラフによる知識表現です。「哺乳類 ─ 動物」のような上位・下位(継承)の関係をis-a、「タイヤ ─ 自動車」のような部分と全体の関係をpart-of、属性を持つ関係をhas-aといいます。is-aの関係には推移律が成り立ちます(人間 is-a 哺乳類、哺乳類 is-a 動物 → 人間 is-a 動物)。

Cycプロジェクトは1984年に始まった、人間の常識をすべて記述しようとする長期プロジェクトで、現在も続いています。

オントロジーとセマンティックWeb

オントロジーは概念とその関係を体系的に定義したもので、知識の共有と再利用を可能にします。対象世界を哲学的に厳密に考察して人手で構築するヘビーウェイトオントロジーと、Webなどのデータから自動で概念間の関係を獲得するライトウェイトオントロジーがあります。セマンティックWebはWeb上の情報に機械が理解できる意味を付与し、コンピュータが情報を処理できるようにする構想です。Webのデータから知識を抽出するウェブマイニングは、データマイニングをWebに適用したものです。

対話・質問応答システム

試験で問われる観点

この節の練習問題(9問)

答えを見る前に選んでから開いてください。同じ問題は章別演習でランダム出題されます。

  1. 問1
    1970年代にスタンフォード大学で開発された、血液中の細菌感染症の診断と抗生物質の処方を支援するエキスパートシステムとして最も適切なものを選びなさい。
    1. 1パリー(PARRY)
    2. 2イライザ(ELIZA)
    3. 3ワトソン(Watson)
    4. 4マイシン(MYCIN)
    答えと解説

    正解: 4

    MYCINは約500のルールを持ち、質問に答えていくと感染症の原因菌を推定して抗生物質を提案する初期の代表的なエキスパートシステムで、専門医に近い精度を示しました。ELIZAは1966年の対話プログラム、PARRYは偏執症患者を模した1972年の対話プログラム、ワトソンはIBMが開発し2011年にクイズ番組で人間に勝った質問応答システムで、いずれも医療診断のエキスパートシステムではありません。

  2. 問2
    意味ネットワークにおいて、「哺乳類 ─ 動物」のように概念の上位・下位(継承)を表す関係と、「タイヤ ─ 自動車」のように全体と部分を表す関係の組み合わせとして正しいものを選びなさい。
    1. 1継承: is-a、全体と部分: part-of
    2. 2継承: part-of、全体と部分: is-a
    3. 3継承: has-a、全体と部分: is-a
    4. 4継承: part-of、全体と部分: has-a
    答えと解説

    正解: 1

    意味ネットワークは概念をノード、関係を矢印で表す知識表現です。「哺乳類 is-a 動物」のように下位概念が上位概念の性質を継承する関係が is-a、「タイヤ part-of 自動車」のように部分と全体を表す関係が part-of です。has-a は「自動車 has-a タイヤ」のように所有・構成を全体側から表す関係で、part-of の逆方向にあたります。

  3. 問3
    1984年に始まり、「鳥は飛ぶ」「人は死ぬ」といった人間の常識をすべてコンピュータに記述しようとしている長期プロジェクトとして最も適切なものを選びなさい。
    1. 1インタビューシステム
    2. 2Cycプロジェクト
    3. 3東ロボくん
    4. 4セマンティックWeb
    答えと解説

    正解: 2

    Cycプロジェクトはダグラス・レナートが1984年に開始した、一般常識をルールとして体系的に記述する知識ベース構築プロジェクトで、現在も続いています。東ロボくんは国立情報学研究所が2011年から2016年まで行った東大合格を目指すプロジェクト、セマンティックWebはWeb上の情報に意味を付与して機械が処理できるようにする構想、インタビューシステムは専門家から知識を引き出す仕組みです。

  4. 問4
    国立情報学研究所を中心に2011年から進められた「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトの人工知能で、模試で私大の多くに合格可能な偏差値に達したものの、文章の意味を理解する読解力の壁から東大合格の目標は断念された。この人工知能の名称として最も適切なものを選びなさい。
    1. 1イライザ(ELIZA)
    2. 2SHRDLU
    3. 3東ロボくん
    4. 4ワトソン
    答えと解説

    正解: 3

    東ロボくんは、大学入試問題を解くことでAIの限界と可能性を探ったプロジェクトで、知識を大量に処理する科目では高い成績を出しましたが、文章の意味理解を要する読解では限界があり、2016年に東大合格の目標を取り下げました。ワトソンはIBMの質問応答システム、ELIZAは1966年の対話プログラム、SHRDLUは積み木の世界を自然言語で操作するプログラムです。

  5. 問5
    エキスパートシステムの構築において、専門家の暗黙的な知識をコンピュータに取り込むために、専門家に質問を繰り返して知識を引き出す仕組みを何というか。最も適切なものを選びなさい。
    1. 1セマンティックWeb
    2. 2意味ネットワーク
    3. 3オントロジー
    4. 4インタビューシステム
    答えと解説

    正解: 4

    インタビューシステムは、専門家に対して質問を投げかけ、その回答からルールを獲得しようとする知識獲得の支援ツールです。ただし専門家の知識は言語化しにくく矛盾も多いため、知識獲得のボトルネックを根本的には解消できませんでした。意味ネットワークは概念の関係をグラフで表す知識表現、オントロジーは概念と関係の体系的な定義、セマンティックWebはWeb上の情報に意味を付与する構想です。

  6. 問6
    大量のデータから有用なパターンや知識を統計的・機械学習的な手法で発見することを「データマイニング」という。これをWeb上の文書やリンク構造、アクセス履歴に適用したものを( )という。括弧に入る語として最も適切なものを選びなさい。
    1. 1ウェブマイニング
    2. 2セマンティックWeb
    3. 3オントロジー
    4. 4Question-Answering
    答えと解説

    正解: 1

    ウェブマイニングはデータマイニングをWebに適用したもので、ページの内容、リンク構造、利用者の行動履歴などから知識を抽出します。IBMのワトソンがWikipediaなどの大量の文書から知識を得たのもこの応用例です。セマンティックWebはWeb上の情報に機械が理解できる意味を付与する構想、オントロジーは概念体系の定義、Question-Answeringは質問に回答するタスクを指します。

  7. 問7
    人工知能の歴史上の代表的なシステムに関する記述として、誤っているものを選びなさい。
    1. 1MYCINは1970年代の医療診断エキスパートシステムで、専門医に迫る診断精度を示したが、責任の所在などの問題から実用化には至らなかった
    2. 2オントロジーの研究では、ヘビーウェイトオントロジーはコンピュータが自動で概念を獲得する軽量な方法を、ライトウェイトオントロジーは哲学的に厳密に人手で構築する方法を指す
    3. 3ELIZAは1960年代に作られた対話プログラムで、相手の発言をパターンに沿って言い換えるだけだが、利用者が人間と話していると錯覚することがあった
    4. 4ワトソンはIBMが開発した質問応答システムで、2011年にアメリカのクイズ番組で人間のチャンピオンに勝利した
    答えと解説

    正解: 2

    オントロジーの区分は逆で、ヘビーウェイトオントロジーは対象世界の知識を哲学的に厳密に考察して人手で構築する方法、ライトウェイトオントロジーはWebなどのデータから自動で概念間の関係を獲得する軽量な方法を指します。ELIZA、ワトソン、MYCINに関する記述は正しく、いずれも各時代の人工知能を代表するシステムです。

  8. 問8
    Webなどの大量のデータから、概念間の関係をコンピュータが自動で獲得して構築するオントロジーを何というか。最も適切なものを選びなさい。
    1. 1ライトウェイトオントロジー
    2. 2ヘビーウェイトオントロジー
    3. 3セマンティックWeb
    4. 4インタビューシステム
    答えと解説

    正解: 1

    データから自動で概念間の関係を獲得するのがライトウェイトオントロジーです。ヘビーウェイトオントロジーは対象世界を哲学的に厳密に考察して人手で構築します。セマンティックWebはWeb上の情報に機械が理解できる意味を付与する構想、インタビューシステムは専門家に質問を重ねて知識を引き出す仕組みです。

  9. 問9
    意味ネットワークで「人間 is-a 哺乳類」と「哺乳類 is-a 動物」が成り立つとき、「人間 is-a 動物」も導ける。この推論の根拠として最も適切なものを選びなさい。
    1. 1part-ofの関係による全体と部分の対応
    2. 2has-aの関係による属性の付与
    3. 3ライトウェイトオントロジーの自動獲得
    4. 4is-aの関係に成り立つ推移律
    答えと解説

    正解: 4

    is-aは概念の上位・下位(継承)を表す関係で、推移律が成り立つため、2つのis-aの関係をつなげて「人間 is-a 動物」を導けます。part-ofは部分と全体の関係、has-aは属性を持つ関係で、この推論の根拠ではありません。ライトウェイトオントロジーはWebなどのデータから概念間の関係を自動で獲得する考え方で、推論の性質とは別のものです。