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人工知能分野で議論される問題(フレーム問題、シンボルグラウンディング、チューリングテスト)

第1章 人工知能とは / 節 2

シラバスのキーワード: ダートマス会議トイ・プロブレムフレーム問題シンボルグラウンディング問題身体性チューリングテスト中国語の部屋強いAIと弱いAI知識獲得のボトルネックシンギュラリティローブナーコンテスト

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マンガで学ぶ フレーム問題

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AIブームの歴史と直面した問題

ブーム 時期 中心技術 限界
第一次 1950〜60年代 探索・推論 トイ・プロブレムしか解けない、フレーム問題
第二次 1980年代 知識表現、エキスパートシステム 知識獲得のボトルネック
第三次 2010年代〜 機械学習、ディープラーニング 説明可能性、公平性など

第一次ブームで解けたのは、ルールと目的が明確な迷路やパズルのような「トイ・プロブレム(おもちゃの問題)」だけでした。第二次ブームでは専門家の知識を人が聞き出してルール化する作業が膨大で、知識獲得のボトルネックに突き当たりました。ルールベース機械翻訳が統計的機械翻訳に置き換えられたのも、この限界の表れです。

フレーム問題

ロボットが洞窟から爆弾の載ったバッテリーを運び出す思考実験で知られます。ある課題に関係のある事柄だけを選び出して考慮することは、無限にある「関係のない事柄」を除外する必要があり、現実世界では極めて困難であるという問題です。人工知能の根本的な難問とされます。

シンボルグラウンディング問題と身体性

「シマウマ=シマ模様のあるウマ」と記号で定義しても、コンピュータは実物のシマウマを見てその記号と結びつけられません。記号(シンボル)とその意味を接地(グラウンディング)できないというこの問題に対し、身体を通じて環境と相互作用することで概念を獲得すべきだとする考え方が身体性のアプローチです。

チューリングテストとローブナーコンテスト

アラン・チューリングが提案した、機械が人間と区別がつかない会話ができれば知能があると見なすテストです。1991年から開催されているローブナーコンテストはこの形式で会話プログラムを競います。試験では「チューリングテストは機械の内部構造を検査する」といった誤りが出ます。

中国語の部屋、強いAIと弱いAI

哲学者ジョン・サールは、中国語を理解しない人が規則書どおりに記号を操作して正しい返答を返す「中国語の部屋」の思考実験で、テストに合格しても「理解」しているとは言えないと主張しました。サールは人間と同等の心を持つ「強いAI」と、道具として特定の課題をこなす「弱いAI」を区別しています。

シンギュラリティ

人工知能が自分より賢い人工知能を作れるようになり、技術の進歩が人間に予測できない速さで進む転換点です。レイ・カーツワイルは2045年ごろに到来すると予測しました。

試験で問われる観点

この節の練習問題(12問)

答えを見る前に選んでから開いてください。同じ問題は章別演習でランダム出題されます。

  1. 問1
    ロボットが洞窟から爆弾の載ったバッテリーを運び出す思考実験で知られる、「ある課題に関係のある事柄だけを選び出して考慮することが難しい」という問題を何というか。最も適切なものを選びなさい。
    1. 1フレーム問題
    2. 2シンボルグラウンディング問題
    3. 3トイ・プロブレム
    4. 4知識獲得のボトルネック
    答えと解説

    正解: 1

    フレーム問題は、1969年にマッカーシーとヘイズが提起した問題で、現実世界では起こりうる事柄が無限にあるため、いま考慮すべき事柄(フレーム)だけを取り出すことが難しいという指摘です。哲学者デネットのロボットと爆弾の例で説明されます。シンボルグラウンディング問題は記号と意味の結びつき、トイ・プロブレムは単純化された問題しか解けないこと、知識獲得のボトルネックは専門家の知識を書き出す困難さを指します。

  2. 問2
    「シマウマ」という記号を「シマ模様のあるウマ」と定義しても、コンピュータは実物のシマウマを見てそれと結びつけられない、というように、記号と実世界の意味を結びつけることの難しさを指す問題として最も適切なものを選びなさい。
    1. 1モラベックのパラドックス
    2. 2シンボルグラウンディング問題
    3. 3知識獲得のボトルネック
    4. 4中国語の部屋の思考実験
    答えと解説

    正解: 2

    シンボルグラウンディング問題は、認知科学者スティーブン・ハルナッドが1990年に提起した、記号(シンボル)をそれが指す実世界の対象や経験に接地(グラウンディング)させることの難しさを指す問題です。知能には身体を通じた経験が必要だとする「身体性」の議論とも関係します。モラベックのパラドックスは高度な推論より知覚や運動の方が機械には難しいという逆説、知識獲得のボトルネックは専門家の知識をルール化する困難さ、中国語の部屋は強いAIへの批判の思考実験で、いずれも記号と意味の結びつきの問題そのものではありません。

  3. 問3
    哲学者ジョン・サールが、チューリングテストに合格するプログラムであっても「理解」しているとは言えないと主張するために用いた思考実験として最も適切なものを選びなさい。
    1. 1ハノイの塔
    2. 2東ロボくん
    3. 3中国語の部屋
    4. 4ローブナーコンテスト
    答えと解説

    正解: 3

    中国語の部屋は、中国語を理解しない人が部屋の中でマニュアルに従って記号を操作し、外から見ると中国語で会話できているように見えるという思考実験で、サールは1980年にこれを用いて、記号操作だけでは意味の理解(強いAI)は実現しないと批判しました。ローブナーコンテストはチューリングテスト形式で会話プログラムを競うコンテスト、ハノイの塔は探索の例題、東ロボくんは東大合格を目指した国立情報学研究所のプロジェクトです。

  4. 問4
    第二次AIブームのエキスパートシステムが直面した、「専門家の知識を人間が聞き出してルールとして記述する作業が膨大で、知識を集めきれない」という限界を表す語として最も適切なものを選びなさい。
    1. 1モラベックのパラドックス
    2. 2組み合わせ爆発の問題
    3. 3シンボルグラウンディング
    4. 4知識獲得のボトルネック
    答えと解説

    正解: 4

    知識獲得のボトルネックは、エキスパートシステムの構築において、専門家の暗黙的な知識を引き出してルール化する作業が最大の障害になったことを指し、第二次AIブームが終わる要因の一つでした。モラベックのパラドックスは知覚や運動が機械には難しいという逆説、組み合わせ爆発は探索の候補が指数的に増える問題、シンボルグラウンディングは記号と実世界の意味を結びつける難しさで、いずれも知識の記述作業の限界を指す語ではありません。

  5. 問5
    人工知能が自分自身より賢い人工知能を作れるようになった結果、技術の進歩が人間には予測できない速さで進む転換点を指す言葉を( )という。括弧に入る語として最も適切なものを選びなさい。
    1. 1シンギュラリティ(技術的特異点)
    2. 2AI効果(AIエフェクト)
    3. 3知識獲得のボトルネック問題
    4. 4シンボルグラウンディング問題
    答えと解説

    正解: 1

    シンギュラリティ(技術的特異点)は、未来学者レイ・カーツワイルが2045年ごろに到来すると予測したことで広く知られる概念で、人工知能が自らを改良して指数的に賢くなる転換点を指します。AI効果は実現した技術が知能と見なされなくなる現象、知識獲得のボトルネックは専門家の知識を記述する困難さ、シンボルグラウンディング問題は記号と実世界の意味を結びつける難しさを指し、技術進歩の転換点を表す語ではありません。

  6. 問6
    1956年にアメリカで開かれ、「人工知能(Artificial Intelligence)」という言葉が初めて公式に使われたとされる会議の名称と、その提案者の組み合わせとして正しいものを選びなさい。
    1. 1ローブナーコンテスト、マービン・ミンスキー
    2. 2ダートマス会議、ジョン・マッカーシー
    3. 3ダートマス会議、アラン・チューリング
    4. 4ローブナーコンテスト、ジョン・サール
    答えと解説

    正解: 2

    ダートマス会議は1956年にジョン・マッカーシーの提案で開かれた研究会で、ここで「人工知能」という言葉が使われ、人工知能研究の出発点とされています。マービン・ミンスキーらも参加しました。アラン・チューリングはチューリングテストの提唱者、ジョン・サールは中国語の部屋の思考実験を提示した哲学者で、ローブナーコンテストはチューリングテスト形式の会話プログラムのコンテストです。

  7. 問7
    「強いAI」と「弱いAI」の区別に関する説明として、最も適切なものを選びなさい。
    1. 1強いAIは人間の専門家と同等以上の精度を達成したAI、弱いAIは人間の精度に達していない研究段階のAIを指す
    2. 2強いAIは大規模な計算資源で学習した汎用の基盤モデル、弱いAIは特定の業務向けに小規模なデータで学習したモデルを指す
    3. 3強いAIは人間と同じように心や意識を持ち知的活動を行うAI、弱いAIは特定の課題を人間のように処理する道具としてのAIを指す
    4. 4強いAIは特定の課題を人間のように処理する道具としてのAI、弱いAIは人間と同じように心や意識を持ち知的活動を行うAIを指す
    答えと解説

    正解: 3

    強いAI・弱いAIは哲学者ジョン・サールが用いた区別で、強いAIは人間と同等の心や意識を持ち本当に「理解」するAI、弱いAIは心を持たず特定の問題を解くための道具としてのAIを指します。サールは中国語の部屋の議論で強いAIの実現可能性に疑問を呈しました。計算速度、データ量、商用化の有無による区別ではありません。

  8. 問8
    第一次AIブームの探索・推論による人工知能が、迷路やパズルのような限定された問題は解けても現実の複雑な問題には対応できなかったことを表す言葉と、その背景にある問題の組み合わせとして最も適切なものを選びなさい。
    1. 1シンボルグラウンディング問題:現実世界の記号と意味を結びつけられず、迷路のような限定された問題しか解けない
    2. 2知識獲得のボトルネック:専門家から知識を聞き出す作業が膨大になり、限定された問題以外にはルールを記述できない
    3. 3AI効果:迷路やパズルが解けると探索の仕組みが明らかになり、それが知能とは見なされなくなって研究が停滞する
    4. 4トイ・プロブレム:現実世界では考慮すべき事柄が無数にあり、関係のあるものだけを取り出せないフレーム問題に直面する
    答えと解説

    正解: 4

    第一次AIブームで解けたのは、ルールと目的が明確に定義された迷路やパズルなどの「トイ・プロブレム(おもちゃの問題)」でした。現実の問題では、考慮すべき事柄が無限にあるため関係のあるものだけを選び出せないフレーム問題に直面し、ブームは終息します。知識獲得のボトルネックは第二次ブームのエキスパートシステムの課題、シンボルグラウンディング問題は記号と意味の結びつきの問題です。

  9. 問9
    チューリングテストの判定方法と、その形式で会話プログラムを競う大会の組み合わせとして最も適切なものを選びなさい。
    1. 1機械の内部構造を調べて知能の有無を判定する/ローブナーコンテスト
    2. 2会話の受け答えで人間と区別できるかを判定する/ローブナーコンテスト
    3. 3会話の受け答えで人間と区別できるかを判定する/ILSVRC
    4. 4機械の内部構造を調べて知能の有無を判定する/ILSVRC
    答えと解説

    正解: 2

    チューリングテストは、機械の内部構造ではなく会話の振る舞いが人間と区別できるかで知能を判定します。この形式で会話プログラムを競うのが1991年から開かれているローブナーコンテストです。ILSVRCは画像認識のコンペティションで、会話とは関係ありません。

  10. 問10
    人工知能分野で議論される問題に関する記述として、不適切なものを選びなさい。
    1. 1身体性のアプローチは、環境との相互作用を通じて概念を獲得すべきと考える
    2. 2フレーム問題は、関係のない無数の事柄を除外することの難しさを指す
    3. 3シンボルグラウンディング問題とは、関係のある事柄だけを選ぶ難しさである
    4. 4カーツワイルは、シンギュラリティが2045年ごろに到来すると予測した
    答えと解説

    正解: 3

    課題に関係のある事柄だけを選び出す難しさはフレーム問題の説明で、シンボルグラウンディング問題は記号と実世界の意味を結びつけられない問題です。身体性のアプローチはシンボルグラウンディング問題への対応として、環境との相互作用で概念を獲得する考え方です。カーツワイルによる2045年の予測も正しい記述です。

  11. 問11
    AIブームの歴史に関する記述として、不適切なものを選びなさい。
    1. 1第一次ブームは探索・推論が中心で、トイ・プロブレムしか解けなかった
    2. 2第二次ブームは知識表現が中心で、知識獲得のボトルネックに直面した
    3. 3第三次ブームは機械学習が中心で、説明可能性や公平性が課題とされる
    4. 4統計的機械翻訳の限界から、ルールベース機械翻訳が後に主流となった
    答えと解説

    正解: 4

    実際には、人が文法ルールを書くルールベース機械翻訳が知識獲得の限界に突き当たり、対訳データの統計を使う統計的機械翻訳に置き換えられたので、順序が逆です。第一次ブームの探索・推論とトイ・プロブレム、第二次ブームの知識表現と知識獲得のボトルネック、第三次ブームの機械学習と説明可能性・公平性の課題は、いずれも正しい組み合わせです。

  12. 問12
    倉庫のロボットに「棚から箱を持ってきて」と指示したところ、箱を動かすと天井が落ちないか、壁の色が変わらないかなど、無関係な事柄まで検討し続けて動けなくなった。この状況が示す問題として最も適切なものを選びなさい。
    1. 1シンボルグラウンディング問題
    2. 2フレーム問題
    3. 3知識獲得のボトルネック
    4. 4シンギュラリティ
    答えと解説

    正解: 2

    課題に関係のある事柄だけを選び出すには、無数にある関係のない事柄を除外する必要があり、それが現実世界では極めて難しいという問題がフレーム問題です。シンボルグラウンディング問題は記号と実世界の意味を結びつけられない問題、知識獲得のボトルネックは専門家の知識をルール化しきれない問題、シンギュラリティは技術の進歩が人間に予測できなくなる転換点を指します。