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人工知能の定義とAI効果、4つのレベル分類

第1章 人工知能とは / 節 1

シラバスのキーワード: 人工知能AI効果エージェント機械学習ディープラーニング

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人工知能の定義は一つではない

人工知能(AI)という言葉は1956年のダートマス会議でジョン・マッカーシーが提案しましたが、「知能とは何か」自体が定まっていないため、研究者ごとに定義が異なります。「推論・認識・判断など人間の知的な活動を機械で実現する技術」という広い捉え方が共通点で、試験では「統一された定義がある」という記述が誤りとして出ます。

4つのレベル分類

人工知能と呼ばれるものは、振る舞いの決め方によって4段階に整理されます。

レベル 内容 例
1 あらかじめ決めた条件で動く単純な制御プログラム エアコンの温度制御、洗濯機
2 探索・推論や知識ベースで多様な振る舞いをする古典的な人工知能 将棋プログラム、診断システム
3 データから入力と出力の関係(規則性)を学習する機械学習 検索エンジン、迷惑メール判定
4 特徴量そのものをデータから獲得する深層学習 画像認識、音声認識、生成AI

レベル3と4の違いは「特徴量を人が設計するか、モデルが獲得するか」です。人工知能 ⊃ 機械学習 ⊃ ディープラーニングという入れ子の関係も頻出です。

AI効果

人工知能の成果として実現した技術でも、仕組みが理解され普及すると「それは単なる自動化で知能ではない」と見なされる心理的な現象をAI効果といいます。文字認識や検索エンジンがその例で、「AIの定義が更新されるたびに研究対象が変わる」という説明は誤りです。

エージェント

環境を観測し、目標を達成するように行動を選ぶ主体をエージェントと呼びます。強化学習の主体、Web上で自律的に処理を行うプログラム、対話システムなどがこの枠組みで捉えられます。「人間の代理人」や「ロボットの身体」を指す言葉ではありません。

AIとロボット

AIは知的な処理を行う仕組み(主にソフトウェア)、ロボットは物理的に動く機械で、別の概念です。AIを搭載しないロボットも、身体を持たないAIも存在します。

試験で問われる観点

この節の練習問題(10問)

答えを見る前に選んでから開いてください。同じ問題は章別演習でランダム出題されます。

  1. 問1
    AIによって実現された技術が普及すると、それは「単なる自動化」であって知能ではないと見なされるようになる現象を( )という。括弧に入る語として最も適切なものを選びなさい。
    1. 1AI効果
    2. 2フレーム問題
    3. 3シンギュラリティ
    4. 4次元の呪い
    答えと解説

    正解: 1

    AI効果は、AIの研究成果が実用化されて原理が分かると、人々がそれを知能とは呼ばなくなる現象です。文字認識やチェスのプログラムがその例です。フレーム問題は関係ある事柄だけを選び出す難しさ、シンギュラリティはAIが人間の知能を超える転換点、次元の呪いは特徴量の次元が増えると必要なデータ量が爆発する問題で、いずれも別の概念です。

  2. 問2
    人工知能を「単純な制御プログラム」「古典的な人工知能」「機械学習」「深層学習」の4つのレベルに分類したとき、「探索・推論や知識ベースを用いて振る舞いのパターンが多彩なもの」に該当するレベルとして最も適切なものを選びなさい。
    1. 1深層学習を取り入れた人工知能
    2. 2古典的な人工知能
    3. 3単純な制御プログラム
    4. 4機械学習を取り入れた人工知能
    答えと解説

    正解: 2

    4つのレベルでは、レベル1がエアコンの温度制御のような単純な制御プログラム、レベル2が探索・推論や知識ベースで多彩に振る舞う古典的な人工知能(将棋プログラムや掃除ロボットなど)、レベル3が機械学習によってルールやパターンをデータから学ぶもの、レベル4が特徴量そのものを学習する深層学習を取り入れたものです。設問の説明はレベル2の古典的な人工知能に当たります。

  3. 問3
    人工知能の文脈における「エージェント」の説明として、最も適切なものを選びなさい。
    1. 1利用者と企業の間でAIサービスの契約や販売を仲介する代理人として捉えたAIやプログラム
    2. 2人間の指示に従って処理を実行し、自らは判断を行わない道具として捉えたAIやプログラム
    3. 3環境を認識し、目標に向けて自律的に行動を選択する主体として捉えたAIやプログラム
    4. 4環境を観測して記録し、人間の代わりにデータを収集・整理する役割として捉えたAIやプログラム
    答えと解説

    正解: 3

    AIの分野では、センサーなどで環境を知覚し、目標達成のために行動を決めて実行する主体をエージェントと呼びます。強化学習の学習主体や、近年のAIエージェントもこの考え方に基づきます。データ収集の担当者、販売代理店、代理受験者は人間の役割であり、AIの用語としてのエージェントではありません。

  4. 問4
    人工知能とロボットの関係に関する記述として、誤っているものを選びなさい。
    1. 1人工知能は主にソフトウェアとして実現され、物理的な身体を持たないものも多い
    2. 2ロボットの中には人工知能を搭載せず、あらかじめ決められた動作だけを行うものもある
    3. 3人工知能がロボットの制御や判断を担う「頭脳」として搭載されることがある
    4. 4ロボットと人工知能は同義であり、人工知能と呼べるものはすべて機械の身体を持つ
    答えと解説

    正解: 4

    人工知能はソフトウェアを中心とした概念で、チャットボットのように身体を持たないものが多く、ロボットには人工知能を積まない産業用機械も多くあります。両者は別の概念で、人工知能がロボットの頭脳として搭載される場合があるという関係です。「同義であり、すべて機械の身体を持つ」という記述が誤りです。

  5. 問5
    人工知能を4つのレベルに分類したとき、「大量のデータから入力と出力の関係を学習し、未知の入力に対して判断する」段階に該当するものを選びなさい。
    1. 1レベル3:検索エンジンや迷惑メール判定のように、データから規則性を学習する機械学習を組み込んだ人工知能
    2. 2レベル4:画像認識や音声認識のように、特徴量そのものをデータから獲得する深層学習を組み込んだ人工知能
    3. 3レベル1:エアコンの温度制御のように、あらかじめ決めた条件で動く単純な制御プログラム
    4. 4レベル2:将棋プログラムや診断システムのように、探索や知識ベースで多様な振る舞いをする古典的な人工知能
    答えと解説

    正解: 1

    レベル1は人が決めたルールどおりに動く制御、レベル2は探索・推論や知識表現で振る舞いを決める古典的AI、レベル3はデータから入出力の関係(規則性)を学習する機械学習、レベル4は特徴量の設計まで自動化する深層学習という分類です。「データから学習する」段階はレベル3で、レベル4との違いは「特徴量を人が設計するか、モデルが獲得するか」にあります。

  6. 問6
    「人工知能」という言葉の定義が専門家の間でも一つに定まっていない主な理由として、最も適切なものを選びなさい。
    1. 1人工知能の研究は法律で範囲が定められており、法改正のたびに定義が変わるため
    2. 2そもそも「知能」とは何かが明確に定義できておらず、研究者ごとに重視する側面が異なるため
    3. 3人工知能という言葉が商標として登録されており、定義を公開できないため
    4. 4人工知能という言葉は日本国内でしか使われておらず、国際的な合意の場がないため
    答えと解説

    正解: 2

    人工知能の定義が定まらないのは、前提となる「知能」の定義自体が確立していないためです。推論や学習を重視する研究者もいれば、人間らしい振る舞いや環境への適応を重視する研究者もおり、教科書でも複数の定義が併記されています。商標や法律、国際的な合意の有無は定義が定まらない理由ではありません。

  7. 問7
    ある企業で、10年前は「人工知能を活用した画期的な機能」と紹介されていた郵便番号の手書き文字認識について、現在の社員が「あれはただの文字認識で、AIではない」と話していた。この現象の説明として最も適切なものを選びなさい。
    1. 1人工知能の定義が学会の合意で改定され、文字認識が正式に研究対象から外れたことを反映するフレーム問題と呼ばれる現象である
    2. 2実用化後に文字認識の精度が低下し、知能と呼べる水準を満たさなくなったことを示すシンボルグラウンディング問題と呼ばれる現象である
    3. 3技術が普及して原理が理解されると、それは知能ではなく単なる自動化だと見なされるようになるAI効果と呼ばれる現象である
    4. 4手書き文字認識は当初からパターン認識として人工知能の研究領域には含まれておらず、社員の認識のほうが正確であることを示す事例である
    答えと解説

    正解: 3

    AI効果とは、人工知能の成果として実現された技術でも、その仕組みが理解され普及すると「それは知能ではなく単なる計算や自動化だ」と見なされてしまう心理的な現象です。手書き文字認識は人工知能研究の代表的な成果であり、研究対象から外れたわけでも精度が下がったわけでもありません。

  8. 問8
    人工知能・機械学習・ディープラーニングの関係に関する記述として、誤っているものを選びなさい。
    1. 1機械学習は人工知能を実現するための手法の一つであり、人工知能のすべてが機械学習で作られているわけではない
    2. 2ディープラーニングは機械学習の手法の一つで、多層のニューラルネットワークを用いる点に特徴がある
    3. 3探索や知識表現に基づく古典的な人工知能は、データから学習しなくても人工知能に分類される
    4. 4ディープラーニングは機械学習とは独立した技術であり、機械学習に含まれない
    答えと解説

    正解: 4

    人工知能は最も広い概念で、その中に機械学習が含まれ、さらに機械学習の中にディープラーニングが含まれるという入れ子の関係にあります。ディープラーニングを機械学習と独立した技術とする記述は誤りです。探索・推論や知識表現による古典的AIは学習を行わなくても人工知能に含まれます。

  9. 問9
    人工知能の定義とレベル分類に関する記述として、不適切なものを選びなさい。
    1. 1レベル3の機械学習では、特徴量そのものをモデルがデータから獲得する
    2. 2「人工知能」という言葉はダートマス会議でマッカーシーが提案した
    3. 3エアコンの温度制御のような単純な制御プログラムはレベル1にあたる
    4. 4将棋プログラムは探索・推論を使う古典的な人工知能の例とされる
    答えと解説

    正解: 1

    特徴量そのものをデータから獲得するのはレベル4の深層学習で、レベル3の機械学習では特徴量を人が設計します。マッカーシーによる命名、単純な制御プログラムをレベル1、将棋プログラムを古典的な人工知能とする整理はいずれも正しい記述です。

  10. 問10
    「室温が設定温度より高ければ冷房を強め、低ければ弱める」機能を持つエアコンが「AI搭載」と宣伝されている。人工知能の4つのレベル分類で、この機能が該当するものとして最も適切なものを選びなさい。
    1. 1レベル1:決めた条件で動く単純な制御プログラム
    2. 2レベル2:探索・推論を用いる古典的な人工知能
    3. 3レベル3:データから規則性を学習する機械学習
    4. 4レベル4:特徴量を自ら獲得する深層学習
    答えと解説

    正解: 1

    室温と設定温度を比べて出力を変えるだけの振る舞いは、あらかじめ決めた条件で動くレベル1の単純な制御プログラムで、エアコンの温度制御はその典型例です。探索・推論や知識ベースで多様に振る舞うのがレベル2、データから入力と出力の関係を学習するのがレベル3、特徴量そのものをデータから獲得するのがレベル4です。