新しい技術のニュースを、どう受け止めるか
毎週のように新しいモデルや機能が発表されます。全部を追いかける必要はありません。試験で求められるのは、新しい動向を見たときに「これはどの方向の進化か」「自社のあの業務に使えるか」を判断できることです。そのために、進化を 3つの軸 で整理します。
軸1 エージェント化:AI が「実行できる」ようになる
答えるだけだった AI が、動けるようになる方向です。支える技術は4つあります。
- API 連携: AI と他のサービスをつなぐ配管工事。
- MCP: AI とシステムの共通言語(第5節)。
- コンピュータ/ブラウザ操作: 人の代わりに Web サイトを開き、情報を集め、フォームに入力し、予約する。
- フィジカル AI: 工場のロボットや自動運転車のように、現実の世界で物理的に動く。
軸2 ドメイン特化:AI を「その会社の専門家」にする
汎用の AI は一般常識には強いが、自社の規程や製品は知りません。専門家にする手段は4つです。
- RAG: 答える前に社内文書を検索して読ませる。
- ファインチューニング: 特定の知識や口調を追加で学習させる。
- パーソナライズ: 利用者ごとの過去の行動や状況に合わせて答えを調整する。
- 検索連携: Web や外部システムから最新情報を取り、「学習した時点以降を知らない」弱点を補う。
軸3 モデルの強化:基礎能力そのものを上げる
- 規模の拡大: ただし大きくすれば良いわけではなく、学習データの質や学習方法も重要。
- マルチモーダル化: 文字だけでなく、画像・音声・動画・数値を一緒に扱う。
- 小型化・軽量化: 端末や社内サーバーで動かしやすくし、クラウド依存を減らす。
- 推論能力の強化: 一気に答えを出すのではなく、段階的に整理しながら答えを導く。
小型モデルと推論モデルの向き不向き
SLM(小型言語モデル) は、安く速く動かせる反面、大型モデルより誤答が増えることがあります。契約書の審査のように高い正確性が要る業務には現時点では向かないことがあり、要約や下書きのように人が確認・修正する前提の業務で利点を活かします。試験で「SLM は LLM と同等の精度であらゆるタスクに対応できる」という記述があれば誤りです。
推論モデルは、複雑な分析や原因の切り分けに強い一方、応答に時間がかかりコストも高めです。即答が必要な FAQ 回答に使うのは過剰で、複雑なトラブルシューティングに回す、という使い分けになります。これは第1節のモデルルーティングの考え方そのものです。
自社に当てはめる3つの問い
新しい技術を「うちでも使えるか」と考えるときの判断基準は3つです。
- その技術が扱う入力データが、自社の業務にあるか。 画像を日常的に扱う業務がなければ、マルチモーダルの優先度は低い。
- コストと精度のバランスが取れるか。 全部を最上位モデルで動かす必要はあるか。
- 現時点の性能で業務に耐えられるか。 できることと、業務で使えることは別。
そして、使えそうだと判断しても、いきなり全社に入れません。まず限定した範囲で PoC(概念実証、小規模な試行)を行い、精度を確かめてから広げる。これは第3章と第6章で繰り返し出てくる原則です。試験では、トレンドに飛びついて全社展開する選択肢が誤答として置かれます。
試験で問われる観点
- 新しい動向を、エージェント化・ドメイン特化・モデル強化のどれに位置づけるか。
- SLM の特徴として誤っているもの(あらゆるタスクで LLM と同等の精度、は誤り)。
- 画像を扱う業務へのマルチモーダル導入の判断: 優先度は高いが、まず限定範囲で PoC。
- FAQ 回答と複雑なトラブルシューティングへのモデル割り当て(通常モデルや SLM と、推論モデルの使い分け)。
- 自社への当てはめの3基準: 入力データの有無、コストと精度のバランス、現時点の性能。