損害保険代理店N社の事故受付AIエージェント
夜間・休日にも届く事故の第一報を題材に、起動タイプと自律性の組み合わせ、取り消せない操作の扱い、導入直後の生産性低下への対応まで / 目安 35分・10問 / 公開 2026-10-09
本番の試験と同じ「1つのケース本文に10問」の形式です。本文と表1〜3を読んでから答えてください。各問の頭に「何を判断する問題か」を示しています。一般論として正しい選択肢ではなく、本文の条件に合う選択肢を選ぶ練習です。目安は35分です。
ケース本文
N社は、自動車保険を中心に扱う損害保険代理店で、契約者は約4万人、従業員は約60名である。契約者から事故の第一報が月に約900件届く。内訳は電話が約7割、Webフォームが約3割で、受付は事故対応課の担当者6名が行い、1件あたり平均25分かけて、事故の内容(日時、場所、相手、けがの有無、車の損傷)を聞き取り、契約内容と照合し、必要な書類と今後の流れを案内し、提携する保険会社へ事故報告を送っている。夜間と休日の電話は保険会社のコールセンターに転送されるが、代理店としての対応は翌営業日になるため、「連絡が遅い」という契約者の不満が年に数十件寄せられている。
受付の記録は、担当者が代理店システムの受付票に自由記述で入力している。項目の書き方は担当者によって異なり、保険会社ごとに事故報告の様式も違うため、保険会社から記載不足で差し戻される報告が全体の約12%ある。過去3年分の受付票は約3万件残っている。契約データは代理店システムにあり、契約者名・証券番号・車両・補償内容を検索できる。
各部門の役割は次のとおりである。事故対応課は、第一報の受付、契約との照合、契約者への案内、保険会社への事故報告、修理工場の案内を担う。営業課は、各契約者の担当として契約内容の相談と更新手続きを担う。コンプライアンス担当は、個人情報と保険業法に関わる確認を行う。情報システム担当は、代理店システムと保険会社のシステムとの接続を管理する。提携保険会社は、正式な事故報告を受け付け、保険金の支払いの可否と金額を判断する。経営企画担当がAI導入のPoCの設計と効果検証を担当する。
Discovery(課題と導入候補を見つける段階)では、経営企画担当が、事故第一報の受付のほかに、契約更新の案内文の作成、見積の比較表の作成、保険金請求書類の不備チェックを候補に挙げ、件数、現行の工数、利用できるデータ、人の判断が必要な箇所を比較した(表1)。現場への聞き取りでは、事故対応課の担当者は「聞き取りと入力に時間がかかり、電話が重なると折り返しが夕方になる」と答え、営業課は「夜間に事故に遭った契約者が、翌日まで何をすればよいか分からず不安になっている」と答えた。
Definition(目的・対象範囲・条件を定める段階)では、初回PoCの目的を「第一報から契約者への初回連絡までの時間の短縮と、受付担当者の1件あたりの時間の短縮、保険会社への報告の差し戻しの削減」とし、対象、AIエージェントの権限、人の役割、提案を止める条件を表2のように定めた。AIエージェントは、Webフォームの送信、または夜間の留守番電話の文字起こしの完了をきっかけに動き、事故の内容を項目ごとに整理し、証券番号または氏名と車両で契約と照合し、契約者への初回連絡文(受付した旨、必要な書類、今後の流れ)と、保険会社への事故報告の下書きを作成して、担当者に示す。担当者が内容を確認して、契約者への連絡と保険会社への報告を行う。PoCの期間中は、すべての案件を担当者が確認する。
コンプライアンス担当からは、けがや相手方との争いを含む案件は代理店の判断で案内してはならず、保険会社への正式な事故報告は代理店の担当者の確認を経て送ること、保険金の支払いの見込みを契約者に伝えてはならないことが示された。情報システム担当からは、Webフォームと留守番電話の文字起こしは代理店システムに取り込めるが、日中の電話は録音の仕組みがなく、文字起こしの対象にできないと報告された。経営企画担当は、PoCの評価指標と目標値を表3のように設定し、8週間の検証後に対象を広げるかを判断する方針である。PoCの費用は、AIエージェントの利用料と接続作業を合わせて8週間で約180万円と見積もられている。
| 候補業務 | 月間件数 | 現行工数 | 主な課題 | 利用可能データ | 初回PoCでの懸念 |
|---|---|---|---|---|---|
| 事故第一報の受付と整理 | 約900件 | 25分/件 | 夜間・休日の初回連絡が翌営業日、聞き取りと入力に時間、報告の差し戻し12% | 過去の受付票約3万件、契約データ、保険会社の報告様式 | けが・争いのある案件は代理店が判断できない。個人情報を扱う |
| 契約更新の案内文の作成 | 約3,000件 | 5分/件 | 文面が定型で担当者ごとの差は小さい | 契約データ、過去の案内文 | 効果が小さい。更新の提案内容は営業課の判断 |
| 見積の比較表の作成 | 約400件 | 40分/件 | 保険会社ごとの条件の読み替えに時間 | 各社の商品資料、見積データ | 商品の説明は保険業法上の確認が必要。誤りの影響が大きい |
| 保険金請求書類の不備チェック | 約500件 | 15分/件 | 不備の見落としで支払いが遅れる | 請求書類(紙とPDF)、保険会社のチェック項目 | 紙書類の読み取り精度が未検証。最終確認は保険会社 |
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 自動車保険の物損事故で、Webフォームまたは夜間の留守番電話から届いた第一報 |
| AIエージェントの権限 | 事故内容の整理、契約との照合、契約者への初回連絡文と保険会社への事故報告の下書きの作成に限定。契約者への送信と保険会社への報告の送信は行わない。支払いの見込みには触れない |
| 人の役割 | 事故対応課の担当者が下書きを確認・修正し、契約者へ連絡し、保険会社へ報告する。修理工場の案内と契約内容の相談は従来どおり担当者が行う |
| 提案を止める条件 | けが・人身事故の記載、相手方との争いや警察に届けていない旨の記載、契約が特定できない場合、飲酒運転など重大な事由の疑いがある記載。これらは下書きを作らず担当者に回す |
| 検証期間 | 8週間 |
| 指標 | 現状 | 目標 | 測り方 |
|---|---|---|---|
| 第一報から契約者への初回連絡までの時間(対象範囲) | 日中は平均4時間、夜間・休日は翌営業日 | 2時間以内(夜間・休日は翌朝9時まで) | 受付の記録時刻から担当者の連絡記録まで |
| 受付担当者の1件あたりの時間(対象範囲) | 25分 | 10分以内 | 下書きの確認開始から報告送信までの時間 |
| 保険会社からの報告の差し戻し率(対象範囲) | 約12% | 5%以下 | 差し戻し件数÷報告件数(月間) |
| 提案を止めた件数と理由 | — | 記録する | 停止条件ごとに件数を集計し、条件の過不足を見る |
| 担当者の修正率 | — | 記録する | 下書きを修正してから使った割合(連絡文・報告別) |
設問
各問の選択肢A〜Dから、最も適切なものを1つ選んでください。答えを決めてから「答えと解説」を開きます。
- 問1最初の対象業務初回PoCの対象業務として、最も適切なものはどれか。表1の候補と、本文にある現場の聞き取りの内容を踏まえて選ぶこと。
- A見積の比較表の作成。1件あたりの工数が最も大きく、保険会社ごとの条件の読み替えという文脈の判断にAIが向いているため。
- B契約更新の案内文の作成。件数が最も多く、文面が定型でデータもそろっているので、短期間で精度が出て効果を示しやすいため。
- C保険金請求書類の不備チェック。不備の見落としという損失を直接減らせて、保険会社のチェック項目という正解のデータがあるため。
- D事故第一報の受付と整理。件数が多く、過去の受付票と契約データがそろい、夜間の初回連絡の遅れという課題に直接効くため。
答えと解説
正解: D
対象業務は、課題の大きさと、データがそろっていて人が最終判断できる範囲かで選びます。事故第一報の受付は月約900件で、過去3年分の受付票と契約データがあり、聞き取りで出た「折り返しが夕方になる」「夜間に何をすればよいか分からない」という課題に直接効きます。けがや争いのある案件は停止条件で人に回せます。見積の比較表は商品の説明に保険業法上の確認が要り、誤りの影響が大きいため初回には向きません。契約更新の案内文は効果が小さく、提案内容は営業課の判断です。請求書類の不備チェックは紙書類の読み取り精度が未検証です。
- 問2起動タイプと自律性レベル表2のAIエージェントの設計を、起動タイプと自律性レベルの組み合わせで表すとどれか。きっかけと、最終判断を誰が行うかで判断すること。
- A指示型と協働型。担当者がフォームの内容を貼り付けて指示し、定型の物損事故はAIが保険会社への報告の送信まで完了させるため。
- B定時型と支援型。毎朝9時に前夜の留守番電話とフォームをまとめて処理し、下書きを担当者が確認して送るため。
- C条件型と支援型。フォームの送信や文字起こしの完了を検知して動き、下書きを作るが、連絡と報告の送信は担当者が行うため。
- D条件型と自律型。フォームの送信を検知して動き、契約との照合から契約者への連絡と保険会社への報告まで人の確認なしに完了させるため。
答えと解説
正解: C
起動タイプは「何をきっかけに動くか」で決まります。表2と本文では、Webフォームの送信または留守番電話の文字起こしの完了をきっかけに動くので、出来事を検知して動く条件型です。担当者が貼り付けて指示するわけではなく、毎朝まとめて動くわけでもありません。自律性レベルは「最終判断を誰がするか」で決まります。AIの権限は下書きの作成までで、契約者への連絡と保険会社への報告は担当者が確認して行うので支援型です。定型の案件を人の確認なしに完了させる協働型や、報告の送信まで完了させる自律型は、表2の権限を超えています。
- 問3提案を止める条件次の第一報のうち、AIエージェントが下書きを作らずに担当者へ回すべきものはどれか。表2の「提案を止める条件」に該当するものを選ぶこと。
- A駐車場でバックした際に隣の車のドアに接触した。相手は不在で、管理会社と警察に届け出た。証券番号は記載あり。
- B走行中に飛び石でフロントガラスにひびが入った。相手はいない。証券番号は不明だが氏名と車両番号は記載あり。
- C停車中に後ろから追突された。相手は過失を認めており、警察に届け出た。自分と相手にけがはない。証券番号は記載あり。
- D交差点で出会い頭に接触した。相手の車の同乗者が首を痛めたと言っている。警察に届け出た。証券番号は記載あり。
答えと解説
正解: D
表2の停止条件は、けが・人身事故の記載、相手方との争いや警察に届けていない旨の記載、契約が特定できない場合、重大な事由の疑いの4つです。相手の同乗者が首を痛めたという第一報はけがの記載にあたり、コンプライアンス担当の方針どおり代理店の判断で案内できる案件ではないので、下書きを作らずに担当者に回します。駐車場の接触は相手不在ですが警察に届け出ていて争いの記載はなく、物損として対象です。飛び石は証券番号が不明ですが、氏名と車両で契約を特定できるので停止条件に当たりません。追突はけがなし、警察届出済みで対象です。「相手がいる事故」や「証券番号がない」ことと、停止条件は別として読み分けます。
- 問4役割分担第一報の受付から保険会社への報告までの役割分担として、最も適切なものはどれか。表2の権限と人の役割、各部門の現在の役割を踏まえて選ぶこと。
- AAIが事故内容を整理し、営業課の契約担当者が契約内容を確認して契約者に連絡し、事故対応課は保険会社への報告と修理工場の案内だけを行う。
- BAIが整理・照合と2つの下書きを作り、事故対応課の担当者が確認・修正して契約者に連絡し、保険会社に報告する。修理工場の案内は担当者が行う。
- CAIが整理・照合と下書きを作り、コンプライアンス担当が全件の内容を個人情報の観点で確認してから、事故対応課の担当者が契約者に連絡して報告する。
- DAIが整理・照合と下書きを作り、物損事故は契約者への連絡と保険会社への報告をAIが送信し、担当者は停止条件に当たった案件だけを扱う。
答えと解説
正解: B
表2では、AIの権限を整理・照合と2つの下書きの作成に限定し、人の役割として事故対応課の担当者が確認・修正して契約者に連絡し、保険会社に報告すると定めています。修理工場の案内と契約内容の相談は従来どおり担当者です。営業課に契約者への連絡を移す案は、第一報の受付と案内という事故対応課の役割を変えてしまい、営業課の現在の役割(契約の相談と更新)とも違います。コンプライアンス担当に全件確認させる案は、個人情報と保険業法の確認という役割を超え、初回連絡までの時間の短縮という目的にも反します。AIが送信まで行う案は、PoC期間中は全件を担当者が確認するという条件に反します。
- 問5取り消せない操作の扱い表2では、保険会社への事故報告の送信をAIエージェントに行わせない。この設計の理由として最も適切なものはどれか。
- A保険会社のシステムとの接続が技術的に未整備で、送信を自動化できないため。接続が整えば送信もAIに任せる前提である。
- BAIの作る報告の文面の精度がまだ低く、差し戻しが増えるおそれがあるため。精度が目標に達すれば送信もAIに任せる前提である。
- C正式な報告は一度送ると取り消しにくく、支払いの判断に直接つながる操作であるため。精度に関係なく、人の確認を挟む対象である。
- D保険会社が代理店からの自動送信を規約で禁止しているため。規約が変われば送信もAIに任せる前提である。
答えと解説
正解: C
AIに任せるかどうかの判断基準は「やり直しがきくか」です。保険会社への正式な事故報告は、送ると保険会社がそれをもとに支払いの可否と金額を判断し始めるため、取り消しにくく、影響が大きい操作です。こうした不可逆な操作は、AIの精度やシステムの接続状況に関係なく、人の確認を挟みます。コンプライアンス担当が「代理店の担当者の確認を経て送る」と示したのも同じ理由です。接続の未整備や文面の精度を理由にすると、解消したら自動送信してよいことになりますが、本文にそのような前提はありません。保険会社の規約の記載も本文にはありません。下書きの作成(やり直しがきく)と送信(やり直しがきかない)を分けて考えます。
- 問6データの準備過去3年分の受付票約3万件は、担当者ごとに書き方が異なる自由記述である。PoCの開始までに行う準備として最も適切なものはどれか。
- A約3万件をそのままAIエージェントに渡し、件数の多さで書き方の違いが平均されることを期待して、整理の手間をかけない。
- B書き方の違いが大きいので過去の受付票は使わず、AIエージェントが持つ一般的な事故受付の知識だけで整理と下書きを作らせる。
- C情報システム担当が約3万件すべてを項目ごとに分ける整形を終えてからPoCを始め、整形が終わるまで開始を延期する。
- D事故対応課と保険会社の報告様式をもとに整理の項目を決め、項目に沿って書かれた受付票を見本として選び、様式とあわせて渡す。
答えと解説
正解: D
AIが整理する項目と下書きの形は、保険会社の報告様式と事故対応課の案内に合わせる必要があります。先に項目を決め、その項目に沿って書かれた受付票を見本として選び、保険会社ごとの様式とあわせて渡せば、担当者ごとの書き方の違いを持ち込まずに済みます。差し戻し率12%の原因は記載不足なので、様式を正として渡すことが差し戻しの削減にも直結します。そのまま全件渡す案は、書き方の違いと記載不足をそのまま学ばせます。過去の受付票を使わない案は、N社が扱う事故の実態と保険会社の様式を反映しません。全件の整形を終えてから始める案は、整形の範囲を決めずに全部やろうとする罠で、開始が遅れるだけです。
- 問7誤りが起きたときの対応PoCの開始後、同姓同名の別の契約者の契約と照合され、その契約内容が初回連絡文の下書きに載っていたことが担当者の確認で分かった。この時の対応として最も適切なものはどれか。
- A照合に使う項目を氏名だけでなく車両番号や生年月日との一致に広げ、一致しない場合は停止条件に加えて担当者に回す設計に直す。
- B担当者が確認する前提の下書きで、送信前に見つかっているので問題はなく、担当者に確認を徹底するよう促して仕組みは変えずに続ける。
- C別の契約者の情報が載る事故は重大なので、PoCをその時点で中止し、契約との照合はすべて担当者が手作業で行う運用に戻す。
- D証券番号の記載がない第一報は今後対象から外し、証券番号のある第一報だけでPoCを続けて、氏名での照合は検証後に扱いを検討する。
答えと解説
正解: A
別の契約者の契約内容が連絡文に載るのは、送信されれば個人情報の漏えいになる誤りです。今回は担当者の確認で止まりましたが、同じ原因で繰り返されるので、原因の照合の仕組みを直します。氏名だけで照合するのではなく、車両番号や生年月日との一致を条件にし、一致しない場合は契約を特定できない案件として停止条件に回せば、PoCを続けながら再発を防げます。担当者の確認に頼る案は、確認の負担が増えるほど見落としが出ます。中止して手作業に戻す案は、原因と改善の余地が分からないまま終わります。証券番号のない第一報を外す案は、原因を直さずに対象を狭めるだけで、飛び石のような案件で契約者の不便が残ります。
- 問8導入直後の生産性低下への対応PoC開始から3週目、担当者から「下書きの確認と修正に時間がかかり、前の方が速かった」という声が出た。推進者の対応として最も適切なものはどれか。
- A担当者の声を重く見て、PoCをいったん止め、従来の聞き取りと入力の手順に戻したうえで、下書きの作り方を改めて計画し直してから再開する。
- B処理時間の目標が達成できていない状況を経営層に報告し、PoCを続けるかどうかの判断を仰いで、指示を待つ。
- C慣れれば速くなると説明し、従来の手順との併用を禁止して下書きの利用を義務づけ、処理時間の目標を期日どおりに厳密に守らせる。
- D導入直後の一時的な低下として想定の範囲と捉え、修正内容を集めて下書きを改善し、併用を認めながら研修と支援を続ける。
答えと解説
正解: D
新しい仕組みの導入直後は、操作に慣れる時間や、AIの誤りを直す手間が加わって、一時的に生産性が下がります。この「谷」は異常ではなく通常の反応で、ここで中止するのが最も大きな失敗です。対応は、谷を浅く短くする施策を続けることです。担当者の修正内容を集めて下書きを改善し(表3の修正率はこのために記録しています)、従来の手順との併用を認めて負担を下げ、研修と相談の支援を続けます。谷の時期に経営層に継続判断を仰ぐと、中止のリスクが高まります。併用を禁止して義務づける案は、担当者の不安を強めて抵抗を大きくします。
- 問9目標値の決め方表3では、保険会社からの報告の差し戻し率の目標を「5%以下」とした。この目標値の根拠として最も適切なものはどれか。本文の差し戻しの原因を踏まえて選ぶこと。
- AAIエージェントの利用料と接続費用の約180万円を、差し戻し対応にかかっている工数の削減額で8週間のうちに回収できる水準から逆算したため。
- B差し戻しをゼロにすることは保険会社側の判断による分があって難しいので、現状の12%の半分より少し厳しい切りのよい数字として置いたため。
- C差し戻しの原因は記載不足であり、保険会社の様式に沿った下書きを担当者が確認すれば、様式の不足による差し戻しはほぼなくせると見込んだため。
- D同業の代理店の平均的な差し戻し率が5%前後とされており、業界の水準にそろえることを保険会社から求められているため。
答えと解説
正解: C
目標値は、現状の数字と、改善の仕組みが何に効くかを結びつけて決めます。本文では、差し戻しの原因は記載不足で、保険会社ごとに様式が違うことが背景にあります。PoCでは保険会社の様式に沿った報告の下書きをAIが作り、担当者が確認するので、様式の不足による差し戻しはほぼなくせます。残るのは事故の事実関係の確認など保険会社側の判断による分で、そこを見込んで5%以下という目標が出てきます。費用の回収から逆算する案は、差し戻しの原因と結びついていません。「切りのよい数字」は根拠になりません。同業の水準や保険会社からの要請は本文にありません。
- 問10横展開の判断8週間の検証後、対象を日中の電話による第一報にも広げるかを判断する際に、最も重視すべき観点はどれか。本文の情報システム担当の報告を踏まえて選ぶこと。
- AWebフォームと留守番電話で目標を達成していれば、電話も同じ第一報なので、同じ仕組みと条件のまま日中の電話にも一斉に広げる。
- B日中の電話は録音の仕組みがなく文字起こしの対象にできないため、録音と文字起こしの導入可否と、聞き取りながら入力する運用との相性を先に確かめる。
- C電話は担当者が直接聞き取れるので、AIの整理は不要と判断し、日中の電話は従来どおり担当者が受け、横展開の対象はWebフォームの他の保険種目に限る。
- D日中の電話にも広げると同時に、見積の比較表の作成と請求書類の不備チェックにも対象を広げ、効果を一度にまとめて検証する。
答えと解説
正解: B
横展開の判断では、目標に届いたかに加えて、PoCの結果が別の条件でも再現するかを見ます。情報システム担当の報告では、日中の電話は録音の仕組みがなく、文字起こしの対象にできません。PoCの仕組みはフォームの文章や文字起こしの文章を入力にしているので、電話に広げるには録音と文字起こしの導入が前提になり、担当者が聞き取りながら入力する現在の運用とどう組み合わせるかも設計し直す必要があります。これを確かめずに同じ仕組みのまま広げることはできません。電話を永久に対象外とする案は、第一報の7割を占める電話を検討せずに外しています。他の業務まで同時に広げる案は、条件の違う業務の効果が混ざって検証できなくなります。
解き方の振り返り
- このケースは、起動タイプ(きっかけ)と自律性レベル(最終判断を誰がするか)を分けて読む練習です。「条件型で動く」ことと「人が確認する」ことは両立します(問2)。
- 取り消せない操作(正式な報告の送信、支払いの判断)は、精度や接続の状況に関係なく人の確認を挟みます。下書きの作成と送信を分けて考えます(問5)。
- 停止条件(けが、争い、契約が特定できない、重大な事由)と、「相手がいる」「証券番号がない」のような対象内の条件は別物です(問3)。
- 導入直後の生産性低下は「谷」として想定し、中止ではなく修正内容の回収と併用・研修で乗り切ります(問8)。本文の数字(月約900件、25分/件、差し戻し12%、夜間は翌営業日)は、目標値と横展開の根拠になります。
このケースは当サイトのオリジナルです。公式サンプル問題や本番の問題を転載・改変したものではありません。形式は公式サンプル問題(2026年9月発行)と参考問題に準じています。