AIエージェント・ストラテジストは第1回の合格率が39.8%で、AI系の入門資格としては珍しく「普通に勉強しても落ちる」試験です。ただし落ちる原因は知識量ではありません。ケース問題を読んで「この状況で何をすべきか」を判断する練習が足りないまま本番を迎えることです。この記事では、公式テキストの読み方と、ケース問題に慣れるための学習計画を示します。
先に要点です。
- 教材は 公式テキスト(PDF)と本サイトの問題集 で足ります。市販の対策本はまだありません
- 学習時間の目安は 20〜30時間。DX・AI推進の実務経験があれば15時間程度
- 6章のうち 第1章・第3章・第6章 が最重要。第6章の5Dモデルは他の章の知識を統合する場なので最後に読む
- 用語の暗記より「判別の決め手」を覚える。試験は「AとBの違いは何か」を状況に当てはめて問う
- 90分は余裕がない。本番は50問のうち 4ケース×各10問 がケース問題なので 1ケース18分 を上限にし、迷った問題は飛ばして戻る
試験概要や日程は AIエージェント・ストラテジストとは にまとめています。この記事は勉強の進め方に絞ります。
教材:公式テキストだけで足りる理由
AICX協会は公式シラバス(ver1.0)と公式テキスト(PDF版2,980円、6章32セクション、約400ページ)を公開しています。試験問題はこのテキストの用語と枠組みをそのまま使うため、テキストを読まずに一般的なAIの知識だけで受けると、「デリゲーション」「起動タイプ」「AI-SECIモデル」「5Dモデル」のようなテキスト固有の言い回しで選択肢が作られていて判断できません。
逆に、テキストを一周して用語の対応関係を押さえれば、市販の対策本は不要です。2026年9月時点で対策本は出ていませんし、Udemyの講座も公式テキストの内容をなぞる構成です。
本サイトの AIエージェント・ストラテジスト問題集 は、公式シラバスの6章32セクションすべてに対応する114問を、ケース問題中心(約6割)で用意しています。公式テキストと同じ用語で出題しているので、テキストの理解度確認に使えます。
2026年10月5日に、同じ6章32セクションを節ごとに解説する Web参考書 も公開しました。各節は「どんな場面で困るか → たとえ → 仕組み → 試験で問われる観点」の順で書いてあり、節の末尾にその節の練習問題が付きます。公式テキストを読む前の下読みや、読んだ後の確認に使えます。公式テキストの転載ではなく、当サイトが独自に書いたものです。
章ごとの重要度と時間配分
公式テキストの6章は分量も重要度も均等ではありません。時間配分の目安です。
| 章 | 内容 | 重要度 | 時間の目安 |
|---|---|---|---|
| 第1章 AIエージェントの基礎 | 定義、起動タイプ、RPAとの違い、MCP、リスクと対策 | ★★★ | 5時間 |
| 第2章 業務の構造化 | As-Is/To-Be、BPRとECRS、業務可視化の手法 | ★★ | 3時間 |
| 第3章 データとナレッジ | 暗黙知・形式知、RAG、AIガバナンス、プロジェクトの進め方 | ★★★ | 5時間 |
| 第4章 ワークフロー設計 | 自動化レベル、トリガーとアクション、条件分岐、コンテキストエンジニアリング | ★★ | 3時間 |
| 第5章 組織と人材 | デリゲーション、推進組織の類型、KGI/KPI、チェンジマネジメント | ★★ | 4時間 |
| 第6章 5Dモデル | Discovery〜Deploymentの5ステップで案件を進める | ★★★ | 5時間 |
第6章の5Dモデルは、第1〜5章で学んだ業務分析、RAG、コンテキスト設計、Human-in-the-Loop、チェンジマネジメントを1つの導入プロジェクトとして統合する章です。各ステップの成果物(要件定義書、合格基準、Go/No-Go判断など)を問う出題が多く、先に読んでも各要素の意味が分からず頭に入りません。第6章は必ず最後に読んでください。
「判別の決め手」を覚える
この試験の設問は、似た概念を並べて「この状況ではどちらか」を問う形が中心です。用語の定義を丸暗記しても、状況に当てはめられなければ正解できません。テキストの各セクションには「判別のポイント」にあたる説明があるので、読むときはそこを抜き出してノートにします。
例を挙げます。
- 支援型 vs 協働型:最終判断を人間が必ず行うなら支援型。定型案件をAIが完結させ、例外だけ人に渡すなら協働型
- リスキリング vs アップスキリング:職務そのものが変わるならリスキリング。同じ職務にスキルを足すならアップスキリング
- 否認 vs 抵抗:変革の必要性を認めていないなら否認。必要性は認めているが感情的に受け入れられないなら抵抗
- サンドボックス vs パイロット:テスト用データで隔離環境なら Development のサンドボックス。実データ・実ユーザーで本番運用なら Deployment のパイロット
- ロールアウト vs スケーリング:同じ機能を多くの人に広げるならロールアウト。機能や対象業務を拡張するならスケーリング
- Definition vs Design:業務要件を文書化するなら Definition。技術的にどう実現するかを設計するなら Design
こうした対比を30〜40個ノートにしておくと、ケース問題の大半はこのリストへの当てはめで解けます。
ケース問題の解き方
ケース問題は「状況の説明 → 問い → 4つの選択肢」の順で書かれています。時間切れを防ぐには読む順番を変えます。
- 問いを先に読む。「最も適切なものを選べ」か「最も不適切なものを選べ」かを確認する。不適切問題での読み落としが失点の典型です
- 選択肢を眺めて、何の概念の対比が問われているかを把握する(例:デリゲーションのリスク評価、KGIとKPIの区別)
- その上で状況説明を読み、判別の決め手になる記述(「取消が困難」「実データで」「職務が変わった」など)を探す
- 決め手に合う選択肢を選び、残りを消去する
「良いことが書いてある選択肢」を選ぶのではなく、「この状況の決め手に対応する選択肢」を選びます。一般論として正しくても状況に合わない選択肢が、この試験の典型的な誤答です。
90分の時間配分
本番は50問90分で、基礎問題(7問前後)、4ケース×各10問のケース問題、発展・時事問題(3問前後)の順に並びます(AICX協会の公式動画と参考問題より。第1回は75分でした)。1ケースの本文は約1ページで表が3〜4つ付くので、本文を読む時間を先に確保します。1ケース18分(本文と表に5分、10問に13分)を上限に進めます。
- 開始〜7分:基礎問題を一気に解く。用語の意味は設問文に書いてあるので、組み合わせの判断に集中する
- 7〜79分:4ケースを18分ずつ。迷った問題はマークして飛ばす
- 79〜85分:発展・時事問題。時事は公式発表を読んでいれば短時間で答えられる
- 最後の5分:マークした問題に戻り、未回答がないか確認する(未回答は確実に失点)
本サイトの 模擬試験 は本番と同じ50問90分です。本番と違って1問ごとに状況が変わるので、本文を読む負荷は本番の方が重くなります。模試を70分以内に終えられれば、本番の時間配分に余裕が出ます。目標は正答率70%です。
3週間の学習スケジュール
第2回試験の申込締切は9月20日、受験期間は10月1日〜31日です。受験期間の後半に受けるなら、10月上旬から始めても3週間確保できます。
| 週 | やること | 時間 |
|---|---|---|
| 1週目 | 公式テキストの第1章と第3章を精読し、判別の決め手をノートにする。問題集の第1章・第3章を解く | 9時間 |
| 2週目 | 第2章・第4章・第5章を読む。ここは決め手のリスト化を優先し、細部は問題を解きながら補う。問題集の該当章を解く | 9時間 |
| 3週目 | 第6章を読み、5Dモデルの各ステップの成果物と判断基準を整理する。模試を2回受け、間違えた問題を復習モードで解き直す | 8時間 |
合計26時間です。実務でDX推進やAI導入に関わっている方は、第2章と第5章を問題演習だけで済ませて15時間程度に圧縮できます。
6週間の学習スケジュール
時間に余裕があれば、6週間で同じ内容を週4〜5時間に薄めます。追加でやる価値があるのは次の2つです。
- 公式ワークシート(テキスト購入者向け)を使って、自分の職場の業務を1つ選び、Discovery から Definition までを実際に書いてみる。要件定義書の4要素(機能・非機能・制約・前提)と合格基準の意味が実感として分かります
- 問題集の解説に出てくる「判別の決め手」を、自分のノートのリストと突き合わせて漏れを埋める
落ちる人の共通点
第1回の受験報告と、本サイトの模試の結果傾向から見える共通点です。
- 知識で解こうとして時間切れ。用語は分かるのにケースの状況説明を全部読んでから考え始め、後半の問題に手が回らない
- 一般論の正解を選ぶ。「まず全業務を棚卸しする」「最初から全社展開する」のような、聞こえは良いがテキストの原則(低リスクから、クイックウィンから)に反する選択肢を選ぶ
- 第6章を飛ばす。5Dモデルはケース問題の題材になりやすく、各ステップの境界(Discovery/Definition、Definition/Design、Development/Deployment)を問う出題を落とす
- 「不適切なものを選べ」の読み落とし
いずれも、問題集で同じ形式の問題を解いておけば防げるものです。まずは 章別演習 で第1章から始めてください。
