設備保守会社の修理見積AIエージェント
初回PoCの対象業務・役割分担・停止条件・評価指標・開始前の確認 / 目安 18分・5問 / 公開 2026-09-25
本番の試験は「1つのケース本文に10問」が基本形です。この練習ケースは本文と表を読んでから5問に答える形式で、本番の半分の分量です。各問の頭に「何を判断する問題か」を示しているので、本文のどこを根拠にするかを探しながら解いてください。目安は18分です。
ケース本文
F社は、オフィスビルと商業施設の空調設備の保守を請け負う中堅企業で、全国に14の営業所を持つ。顧客から「冷房が効かない」「異音がする」といった修理の依頼が電話とWebフォームで届き、各営業所の技術担当者が、設備の型式、設置年、保守契約の種別、過去の修理履歴を確認したうえで、現地調査の要否を判断し、部品代と作業費の見積書を作成している。見積の作成は依頼の受付から平均2営業日かかっており、顧客からは回答の遅さについて苦情が出ている。
依頼の内容は幅が広い。定期点検の範囲内で対応できる軽微な不具合、保守契約の範囲外で有償になる修理、部品の取り寄せが必要で納期が読めない修理、設備の更新を提案すべき老朽化案件が混在している。技術担当者は経験によって判断が異なり、同じ症状でも営業所によって見積金額に差が出ている。設備台帳と修理履歴は基幹システムに登録されており、保守契約の内容は契約管理システムで参照できる。部品の在庫と納期は、調達部が管理する在庫システムで確認する。
各部門の役割は次のとおりである。技術担当者は、依頼内容を読んで現地調査の要否と修理方針を決め、見積書を作成して顧客に送付する。営業所長は、一定金額を超える見積と、保守契約の範囲外の有償修理について承認する。調達部は、部品の在庫と納期、仕入価格を管理する。契約管理部は、保守契約の種別と範囲を管理し、契約の解釈に迷う案件の照会先になる。経営企画部は、PoCの設計と効果検証を担当する。情報システム部は、基幹システム、契約管理システム、在庫システムを参照する権限を整える。
Discovery(課題と導入候補を見つける段階)では、経営企画部が、月間の依頼件数、判断のばらつきの大きさ、利用できるデータ、人の承認が必要な箇所、短期間で検証できる効果を比較した。全営業所・全種別の依頼を一括で対象にするのではなく、必要なデータがそろっていて、技術担当者が最終判断を行える範囲から始めたいと考えている。現場への聞き取りでは、経験の浅い担当者ほど現地調査を多めに設定し、同じ症状でも見積までの日数が長くなることが分かった。
Definition(目的・対象範囲・条件を定める段階)では、対象とする依頼の種別と営業所、AIエージェントが表示する内容、人が決める内容、提案を止めたときの対応を明文化する方針である。回答の速さだけを重視すると、必要な現地調査を省いて誤った見積を出すおそれがあるため、見積の精度とのバランスも見る。現場は、AIエージェントが示す根拠と確認先が分かることで、担当者ごとの判断差を縮められるかを確かめたい。契約管理部は、保守契約の範囲外かどうかの最終判断を、AIエージェントの提案だけで担当者が決めることのないよう求めている。
初回PoCの計画案を表2に示す。AIエージェントは見積書の送付を行わず、技術担当者が提案内容を確認して修理方針と金額を決め、見積書を作成する。部品の在庫がなく納期が確定できない場合、保守契約の解釈に迷う場合、直近の修理履歴が基幹システムに未登録の場合は、その案件への提案を止め、技術担当者が従来の方法で判断する。効果検証では、見積までの日数、見積金額の営業所間のばらつき、提案が現場で使われた度合い、停止条件の過不足を確認する。
| 候補業務 | 月間件数 | 現行工数 | 主な課題 | 利用可能データ | 初回PoCでの懸念 |
|---|---|---|---|---|---|
| 定期点検範囲内の軽微な不具合への回答 | 1,800件 | 20分/件 | 回答の遅れ、担当者による判断差 | 設備台帳、修理履歴、保守契約 | 件数は多いが軽微案件の判断基準が営業所ごとに異なる |
| 保守契約範囲外の有償修理の見積 | 900件 | 45分/件 | 契約範囲の解釈にばらつき、承認待ち | 設備台帳、修理履歴、保守契約、部品在庫 | 契約範囲の判断は契約管理部の照会が必要 |
| 部品取り寄せを伴う修理の納期回答 | 400件 | 30分/件 | 納期が読めず顧客への回答が遅い | 設備台帳、部品在庫 | 在庫システムの納期情報の更新が遅く、当日の状態を反映していない |
| 老朽設備の更新提案 | 150件 | 90分/件 | 提案の内容が担当者の経験に依存 | 設備台帳、修理履歴 | 提案の妥当性を評価する基準が未整備 |
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象依頼の条件 | 定期点検の範囲内で対応できる軽微な不具合のうち、設備台帳と直近2年の修理履歴が基幹システムに登録されているもの |
| AIエージェントの権限 | 修理方針の案、見積金額の目安、根拠とした履歴、確認すべき部門の表示に限定 |
| 人の役割 | 技術担当者が提案を確認して修理方針と金額を決め、見積書を作成して送付する |
| 停止条件 | 部品の在庫がなく納期が確定できない、保守契約の解釈に迷う、直近の修理履歴が未登録 |
| 検証期間 | 8週間(対象は東日本の3営業所) |
設問
各問の選択肢A〜Dから、最も適切なものを1つ選んでください。答えを決めてから「答えと解説」を開きます。
- 問1最初の対象業務初回PoCの対象業務として、最も適切なものはどれか。必要なデータがそろい、技術担当者が最終判断できる範囲から始める方針を踏まえて選ぶこと。
- A老朽設備の更新提案について、過去の提案書を学習させたうえで、提案内容の作成から顧客への送付までを任せる。
- B保守契約範囲外の有償修理について、AIエージェントが契約範囲の判定と見積案を示し、営業所長が承認する形で試す。
- C定期点検範囲内の軽微な不具合について、設備台帳と修理履歴を使った修理方針と金額の目安の提案を、技術担当者が確認する形で試す。
- D部品取り寄せを伴う修理について、在庫システムの納期をもとに納期回答を自動送信し、在庫情報の更新は開始後の運用で改善する。
答えと解説
正解: C
Discoveryでは「改善したい課題」と「まず試せる範囲」を一緒に考えます。軽微な不具合は月間1,800件と最も多く、回答の遅れと判断差という課題があり、設備台帳と修理履歴という利用可能なデータがそろっています。技術担当者が修理方針と金額を最終決定するため、提案の有用性を人が確かめながら検証できます。老朽設備の更新提案は評価基準が未整備で、顧客への送付まで任せる案は人の最終判断を残す方針に反します。有償修理は契約範囲の判断が契約管理部の照会を要し、営業所長の役割は金額と有償修理の承認であって契約の解釈ではありません。契約管理部が「AIの提案だけで担当者が決めない」よう求めている点にも反します。部品取り寄せは在庫システムの納期情報が当日の状態を反映していないため、その前提のまま自動送信するのは開始前に必要な確認を後回しにしています。
- 問2役割分担AIエージェントの提案が出てから見積書を送るまでの役割分担として、最も適切なものはどれか。表2の権限と、各部門の現在の役割を踏まえて選ぶこと。
- AAIエージェントが修理方針の案と金額の目安、根拠とした履歴を示し、技術担当者が現場の状況を踏まえて方針と金額を決め、見積書を作成して送付する。
- BAIエージェントが軽微な不具合の見積書を作成して顧客に送付し、技術担当者は顧客から問い合わせがあった案件と高額な案件だけを後から確認する。
- C営業所長が対象案件すべての修理方針と金額をAIエージェントの提案をもとに確定し、技術担当者は現地調査が必要な場合だけ補足する。
- D契約管理部がAIエージェントの提案を案件ごとに承認してから技術担当者に回し、技術担当者は見積書の作成と送付だけを行う。
答えと解説
正解: A
IPO(入力・処理・出力)で整理すると、AIエージェントは設備台帳と修理履歴を入力として修理方針の案と金額の目安を出力します。その出力を使って「誰が見積を決めるか」は別に定める必要があり、表2では技術担当者が提案を確認して方針と金額を決め、見積書を作成すると定めています。これがHuman-in-the-Loopを見積送付前の確認として具体化した役割分担です。AIエージェントが見積書を送付する案は今回の権限範囲(提案の表示に限定)を超えます。営業所長は一定金額超と契約範囲外の承認が役割であり、全案件の確定は現行の役割と合いません。契約管理部は契約の解釈に迷う案件の照会先であり、全提案の承認者ではありません。
- 問3提案を止める条件対象に選んだ案件でも、AIエージェントの提案を使わずに技術担当者が従来どおり判断すべき場合はどれか。対象を選ぶ条件と、提案を止める条件を区別して選ぶこと。
- A設備台帳と直近2年の修理履歴が登録されている軽微な不具合の依頼を、初回PoCの対象リストに登録する。
- B顧客が急いでいると申告した案件は、提案の表示を止めて技術担当者が従来の方法で判断する。
- C必要な部品の在庫がなく納期が確定できない案件は、提案を使わずに技術担当者が従来の方法で判断する。
- D提案の利用率が想定より低い営業所は、原因を調べる前に翌週から提案の対象外にする。
答えと解説
正解: C
「対象に選んだ案件であること」と「今回は通常どおり提案できること」は別です。例外処理では、提案に必要な前提が崩れたときに何を止め、誰がどの方法で業務を続けるかを決めます。部品の在庫がなく納期が確定できない場合、修理方針の案を出しても実行できる保証がないため、表2の停止条件に該当し、技術担当者が従来の方法で判断します。設備台帳と履歴の登録は対象を選ぶ条件であり、提案を止めて従来の判断に戻す対応ではありません。顧客の急ぎの申告は、この計画では停止条件にしていません。利用率が低い営業所は、提案の根拠や表示のタイミングを調べて計画を見直すのが先で、原因を調べずに対象外にするのは適切ではありません。
- 問4評価指標8週間のPoCを評価する指標の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。今回の目的(回答の遅れと判断差の改善)と、AIエージェントに任せる範囲に合うものを選ぶこと。
- A見積書の自動送付率、営業所長の承認待ち件数、有償修理の受注金額、契約範囲外案件の判定にかかる時間、顧客満足度。
- B対象営業所の売上総額、保守契約の更新率、部品の仕入価格、出張費、技術担当者の残業時間。
- C提案を作成した件数、画面の表示速度、送付後に修正された見積の件数、顧客からの問い合わせ件数、システムの稼働率。
- D見積までの日数、見積金額の営業所間のばらつき、見積の精度、提案の採用率、停止条件の妥当性。
答えと解説
正解: D
AIエージェント導入の成功は「業務に効果があったか」「現場で使われたか」「出力や動作に問題がないか」を分けて確かめます。今回の目的は回答の遅れと判断差の改善なので、見積までの日数と営業所間のばらつきが業務の成果、見積の精度が出力の品質、提案の採用率が現場での使われ方、停止条件の妥当性が例外への対応を表します。見積書の自動送付は今回AIエージェントが行わない機能です。売上総額や契約更新率は経営上重要ですが、他の要因の影響も受け、軽微な不具合への提案の効果を切り分けにくい指標です。作成件数や表示速度だけでは、見積の遅れや判断差が改善したかを確かめられません。
- 問5開始前の確認PoCの開始前に、最も優先して確かめるべき条件はどれか。表2の対象依頼の条件が、対象3営業所で成り立つかという観点で選ぶこと。
- A老朽設備の更新提案について、提案の妥当性を評価する基準を次回PoCまでに整備し、評価を担当する部門を決められるか。
- B対象3営業所で、直近2年の修理履歴が基幹システムに登録されている案件の割合が、検証に足りる件数を確保できる水準か。
- C部品取り寄せを伴う修理について、在庫システムの納期情報の更新頻度を全営業所で統一し、当日の状態を反映できるか。
- D保守契約範囲外の有償修理について、契約管理部への照会経路と過去の判断履歴を提案画面にどこまで表示するか。
答えと解説
正解: B
表2では、対象依頼の条件を「設備台帳と直近2年の修理履歴が基幹システムに登録されているもの」と定めています。この条件を満たす案件が対象3営業所に十分にないと、提案が出せる案件が少なく、8週間の検証で効果を確かめられません。As-Is(現在の業務)とIPOを対応させると、AIエージェントの入力となる履歴データがそろっているかは、開始前に確かめるべき最初の条件です。老朽設備の評価基準、在庫情報の更新頻度、契約範囲外の照会経路はいずれも検討課題ですが、それぞれ今回の対象外の種別に関するものか、今回の権限範囲(提案の表示)の外の話です。まずは今回の対象で提案が成り立つ件数を確保できるかを優先します。
解き方の振り返り
- 本文の「各部門の役割」は、役割分担の問題(問2)と開始前の確認(問5)の根拠になります。誰が何を決めるかを最初に線で引いておくと、選択肢の消去が速くなります。
- 表1の「初回PoCでの懸念」は、問1と問5の判断材料です。件数が多いから選ぶのではなく、データがそろっていて人が確認できる範囲かで選びます。
- 表2の「停止条件」と「対象依頼の条件」は別物です。問3はこの区別を問います。
- 評価指標(問4)は、AIエージェントが行わない機能(見積書の送付)を測る指標が誤答になります。権限範囲と指標を対応させて確認します。
このケースは当サイトのオリジナルです。公式サンプル問題や本番の問題を転載・改変したものではありません。形式は公式サンプル問題(2026年9月発行)と参考問題に準じています。