ワークフローは「きっかけ」と「やること」でできている
Lv.3 のワークフローは、「〇〇が起きたら、△△して、□□する」という形をしています。「〇〇が起きたら」がトリガー(処理を始めるきっかけ)、「△△して、□□する」がアクション(実際に実行される処理)です。設計はこの2つを決めることに集約されます。
トリガーの3大分類
第1章の起動タイプ(指示型・定時型・条件型)が、ワークフロー設計では具体的なトリガーの種類に細分化されます。
指示型:人の意図的な行為が合図
- チャット・音声指示: Lv.2 のチャットボットとの違いは、会話の結果として外部システムへの書き込みや後続のフローが連動する点。
- 手動実行: ボタンを押すなど、「今すぐ実行」を明示的に指示する。定期的ではないが決まったタイミングでまとめて処理したい場合や、承認後に走らせたい場合に使う。
定時型:時計が合図
- スケジュール実行: 毎朝9時、毎週月曜、毎月1日。最もシンプルで予測可能なトリガーで、導入初期にまず試すべき起点。
- 期限・日付ベース: 契約更新日の30日前、支払期限の当日。データの中に記録された日付を参照して動く点が、スケジュール実行と違う。
条件型:変化を検知して動く
- イベントトリガー: 新規メールの着信、ファイルのアップロード、CRM のステータス変更。ワークフロー側が監視対象を見張っている。人が気づいて動く判断を肩代わりし、遅れや見落としを構造的になくす。
- フォーム送信: 問い合わせフォーム、稟議申請、社内 IT 申請。送信後の手動転送や手入力を丸ごと削除できる。
- Webhook: 外部システム側で出来事が起きたときに通知が送られてきて起動する。イベントトリガーとの違いは、変化を検知する主体。イベントトリガーはワークフロー側が見張り、Webhook は外部システム側が知らせてくる。
- 閾値トリガー: 在庫が一定数を下回る、エラー率が一定を超える。監視・アラート・自動対応に使う。
試験のひっかけは「CRM 上で営業担当者がステージを変更したことを検知して起動する仕組み」の種別です。人が操作しているのでフォーム送信に見えますが、起点は状態の変化なのでイベントトリガーです。
アクションの3大分類
アクションは「情報を取る → 考える → 外に出す」の3段階で整理します。
| 分類 | 役割 | 種類 |
|---|---|---|
| データ処理 | 情報を取得・変換・整理する(入力を担う) | API コール(データ取得)、データ抽出・構造化(メールから注文番号を取り出す、PDF から金額を読む)、データ変換・整形(日付形式の統一、CSV から JSON) |
| 生成・判断 | AI が考えて出力する(LLM が中心) | コンテンツ生成(一次返信、レポート下書き、議事録要約)、分類・振り分け(カテゴリ、優先度)、判断・条件分岐(人が対応すべきか、承認基準を満たすか) |
| 実行・連携 | 結果を外に書き出し、人に引き渡す(出力を担う) | API コール(データ送信。Slack 通知、CRM への登録)、ファイル操作(PDF 生成、CSV 出力、フォルダ振り分け)、Human-in-the-Loop(AI が判断できない・すべきでないケースを人に引き渡す) |
API コールは「取得」と「送信」で方向が逆です。「外部サービスから顧客情報を取ってくる」はデータ処理の API コール、「取ってきたメール本文から注文番号を抜き出す」はデータ抽出、という区別が問われます。
Human-in-the-Loop をアクションとして明示的に設計することは、完全自動化を目指す場合でもガバナンス維持に欠かせません。
トリガーは技術ではなく業務から選ぶ
トリガーを選ぶとき、技術的な種類から考えるのではなく、「業務上、何をきっかけに動くべきか」を先に決めて、その要件に合うトリガーを選びます。設計の出発点は、業務フローの中から自然なきっかけを探すことです。第2章の As-Is 分析と HTA で分解した業務フローは、そのままワークフローの設計図になります。
既存システムに情報が蓄積されている環境では、再入力を求めるフォーム送信より、既存の操作を検知するイベントトリガーの方が自然に組み込めます。これは第1章の「現場に負荷をかけない設計」です。1つのトリガーに複数のアクションを連鎖させることで、人が介在しなければできなかった一連の業務が自動化され、実務では1つの業務課題に対して複数のワークフローを組み合わせます。
試験で問われる観点
- CRM のステータス変更を検知して起動する仕組みのトリガー種別(イベントトリガー。人が操作していても起点は状態変化で、フォーム送信ではない)。
- 外部サービスからのデータ取得(API コール)と、取得済みデータからの情報抽出(データ抽出)の区別。
- 3つのワークフロー(毎朝のレポート/申請の受付/メール着信の処理)に最適なトリガー種別の組み合わせ。
- イベントトリガーと Webhook の違い(変化を検知する主体がワークフロー側か外部システム側か)。
- スケジュール実行は導入初期にまず試すべき起点。期限ベースはデータ内の日付を参照する。