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データの種類と特性:構造化・非構造化・半構造化と、誰が処理するか

第3章 AIデータリテラシーとマネジメント / 節 2

シラバスのキーワード: 構造化データ非構造化データ半構造化データJSONメタデータチャンキング変換パターンAPILLM

本文を読んだあと、覚えているか確認してください。

商談メモはなぜ CRM に入らないのか

営業の鈴木さんは、商談のあとにメモを書きます。「A社、来期の予算は300万くらい、決裁は部長、競合は B社が入っている」。このメモは人が読めば十分ですが、顧客管理システム(CRM)の「予算」「決裁者」「競合」の欄には自動では入りません。欄に入れるには、誰かが読み取って転記する必要があります。この「読み取って、形にそろえる」が、まさに生成AI が得意なことです。データの種類を知ると、AI に何を任せるべきかがはっきりします。

データは3種類

種類 形 例 得意なのは
構造化データ 行と列がはっきりした表 受注履歴、社員名簿、仕訳データ 従来の IT システム。検索・集計・比較が速い
非構造化データ 決まった形がない メール、チャット、Word、PDF、画像、音声、動画 LLM。読んで意味を取る
半構造化データ 完全な表ではないが、タグやキーで部分的に整理されている JSON、XML AI と他システムの受け渡し

半構造化データのたとえは名刺です。決まった表ではないが、「会社名」「氏名」「電話」という項目は読み取れます。JSON は「項目名: 値」の組み合わせでデータを書く形式で、AIエージェントの入力・出力の形として非常によく出てきます。

企業が持つデータの約 80% は非構造化データです。ここを扱えるようになったことが生成AI の最大の強みであり、AIエージェント導入の動機の中心です。

誰が処理するか:全部を AI に任せない

試験で問われるのは、「データが何種類あるか」ではなく、業務の流れのどこで、どの種類のデータが生まれ、どの仕組みが処理するかです。

典型的な流れは 非構造化 → LLM → 半構造化 → API → 構造化 です。先の商談メモなら、メモ(非構造化)を LLM が読み、「予算: 300万、決裁者: 部長、競合: B社」という JSON(半構造化)にして、API で CRM の欄(構造化)に登録する、となります。

この分担にすると、精度・速度・コストのすべてが良くなります。表の検索を LLM にやらせるのは、電卓で済む計算を人に暗算させるようなものです。

メタデータとチャンキング:RAG の精度を決める裏方

メタデータは「データについてのデータ」です。文書に付ける属性情報で、カテゴリ、対応する OS、最終更新日などです。RAG で検索するとき、メタデータが整っていれば「Windows 向けの最新版だけ」と絞り込めます。整っていなければ、正しい情報があるのに古い版や別 OS の手順が返ってきます。ナレッジベースの品質は、中身の質だけでなくメタデータの設計で決まると覚えてください。試験では「非構造化データにメタデータは不要」という記述が誤りとして出ます。

チャンキングは、長い文書を意味のまとまりごとに区切る処理で、区切られた1つ1つをチャンクと呼びます。どのくらいの大きさで、どこで切るかは RAG の精度に直結する設計判断です(詳しくは次の節)。

過去のデータを全部直そうとしない

「AI を入れるから、過去10年分のファイルを全部整形しよう」は現実的ではありません。これから作る・更新するデータを AI が読める形で蓄積する運用を定着させる方が効きます。1つのセルには1つのデータ、表記をそろえる、ファイル名に日付と分類を入れる、文書にカテゴリを付ける。データの整備は導入の「準備」ではなく「導入の一部」です。データを記録のためではなく、AI が使う資産として設計します。

試験で問われる観点

この節の練習問題(3問)

答えを見る前に選んでから開いてください。同じ問題は章別演習でランダム出題されます。

  1. 問1
    次の3つのデータを、構造化データ・非構造化データ・半構造化データに分類した組み合わせとして正しいものはどれか。(ア) 顧客から届いた自由記述のクレームメール。(イ) 月次の売上集計テーブル。(ウ) AIエージェントが出力するJSON形式のデータ。
    1. 1(ア) 非構造化、(イ) 構造化、(ウ) 半構造化
    2. 2(ア) 半構造化、(イ) 非構造化、(ウ) 構造化
    3. 3(ア) 構造化、(イ) 半構造化、(ウ) 非構造化
    4. 4(ア) 非構造化、(イ) 半構造化、(ウ) 構造化
    答えと解説

    正解: 1

    行と列の明確な構造を持つ売上集計テーブルは構造化データ、明確な構造を持たないメールや文書は非構造化データ、タグやキーで部分的に整理されたJSONやXMLは半構造化データです。処理の担い手も異なり、構造化データはAPIやワークフローの定型処理、非構造化データはLLM、半構造化データはAIエージェントの入出力インターフェースとして使われます。

  2. 問2
    営業担当者が商談後に書いた自由記述の商談メモから、案件名・金額・次回アクションを抽出してCRMに登録するフローを設計したい。データの種類と処理の担い手の観点から最も適切な設計はどれか。
    1. 1商談メモをLLMに要約させ、要約文をそのままCRMの各項目に転記するようLLMに指示する
    2. 2商談メモ(非構造化)をLLMで読み取ってJSON(半構造化)に変換し、APIでCRMのテーブル(構造化)に登録する
    3. 3商談メモをそのままCRMの備考欄に貼り付け、案件名や金額の抽出はCRMの検索機能に任せる
    4. 4商談メモをRPAで読み取って項目を抽出し、LLMにCRMへの書き込み操作を実行させる
    答えと解説

    正解: 2

    典型的な変換パターンは「非構造化 → LLM → 半構造化 → API → 構造化」です。自由記述のメモはLLMが読み取り、JSONなどの半構造化データに変換し、それをAPIの定型処理でCRMの構造化データに登録します。RPAは自由記述の解釈に向かず、システムへの書き込みは確率的なLLMより定型処理に任せるのが精度・速度・コストの面で合理的です。

  3. 問3
    非構造化データをAIエージェントで活用することに関する記述として、誤っているものはどれか。
    1. 1企業が保有するデータの約8割は非構造化データであり、その処理が生成AIの最大の強みである
    2. 2長い文書は意味のあるまとまりごとに区切るチャンキングを行い、区切りの大きさがRAGの精度に影響する
    3. 3文書の内容が正しければ、カテゴリや最終更新日などのメタデータは検索精度に影響しないため付与しなくてよい
    4. 4社員の所属部署やOS環境のような構造化データは、RAGではなくAPIで取得してプロンプトに加える設計が適している
    答えと解説

    正解: 3

    メタデータ(データについてのデータ)はRAGの検索精度を左右します。内容が正しくてもカテゴリや対応OS、最終更新日などが整備されていなければ、適切なタイミングで正しい情報を参照できません。ナレッジベースの品質はコンテンツの質だけでなくメタデータの設計でも決まります。非構造化データの割合、チャンキングの重要性、構造化データをAPIで取得する設計に関する記述は正しい内容です。